「ならば、国民に堂々と説明すべきだ」
朝日社説はオバマ前大統領とトランプ氏を比較する。
「09年に平和賞を受けたオバマ米大統領は、『核なき世界』に向けた決意を示し、世界に理想の力を再認識させた。それに対しトランプ氏は、偏狭な『米国第一』主義に走り、地球温暖化防止のためのパリ協定など、国際協調の枠組みに次々と背を向け、核軍拡にも踏み出そうとしている。とても平和賞に値するとは思えない」
「核なき世界に向けた決意」と「偏狭な米国第一主義」を持ち出してオバマ氏とトランプ氏を対照的に並べる書きぶりは見事で、トランプ氏の行動が、いかに非平和的であるかがよく分かる。
さらに「首相はきのうの国会で、ノーベル委員会が50年間、推薦者と被推薦者を公表しないことを理由に事実関係の確認を避けた。だが、推薦者が自らその事実を明かすことまで禁じられているわけではない」と追及するが、これもなるほどと思わせる。朝日社説に王手をかけられた安倍首相は今後、どう国会で答弁するのか見物である。
最後に朝日社説は「トランプ氏によると、首相は『日本を代表し、敬意を込めて推薦した』と伝えたという。ならば、国民に堂々と説明すべきだ。それもできないのに、あたかも日本の総意のように振る舞うのはやめてもらいたい」と訴える。
トランプ氏の政治がノーベル平和賞に値するなどとだれも考えないだろう。推薦は決して日本の国民の意思ではない。安倍首相の独断と偏見によるものだ。
安倍首相よ、数の力と小手先の論理で日本の国を動かそうとするのはもう止めてもらいたい。
日本は安全を実感してないし、喜んでもいない
次に毎日新聞の社説を見てみよう。
見出しがしゃれている。「平和賞にトランプ氏推薦 安倍首相、ご冗談でしょう」だ。冒頭も「トランプ米大統領のこのことばを、安倍晋三首相はどんな気持ちで聞いたのだろうか」と書き出し、社説にしては読んでみようという気にさせてくれる。
毎日社説は「北朝鮮政策はうまくいっているとアピールする狙いがあるのだろう。だが、候補者や推薦者は50年間は秘密にする規則があり、発言は道義にもとる。首相はきのうの国会答弁で『コメントは控える』と述べつつ、否定はしなかった」と書いた後、疑問をこう投げかける。
「それにしても、日本国民はトランプ氏が言うように、安全を実感し、喜んでいるのだろうか」
トランプ氏が2月15日の記者会見で述べた「日本の上空をミサイルが飛ばなくなったのは私のおかげだ」と語ったことに対する疑義の声である。