これは、マイクロソフトの強みを最も出せるビジネスにフォーカスできたことを意味していた。世界最強のソフトウエア開発力を持ち、アップルにもグーグルにもフェイスブックにもないビジネス領域での圧倒的な強さを武器に、競合と次々と提携して他にない消費量が稼げる、クラウドビジネスで圧倒的な存在感を持つ会社になったのだ。レガシーの部類から、クラウド領域で世界で戦える数社の一角を担う存在へと、大きく転換させることに成功したのである。

「ポスト・スマホ」時代での覇権奪取へ

マイクロソフトはたしかにスマートフォン時代に乗り遅れた。しかし、スマートフォンが十分に行きわたった今、次の「ポスト・スマホ」時代の覇権争いに大きな存在感を示すことになった。これこそ、株価が急上昇した理由だろう。

パソコンからスマートフォンへの移行が一気に進んだような大きな再編がこれから起きないとは限らない。スマートフォンの歴史は、まだ10年ほどしかない。この先10年、本当にこのままスマートフォンが世界を席巻し続けるのか。それとも新しい再編が起きるのか。そのとき、誰が王者になるのか。株式市場は、それを見越しているのではないか。

実際、アップルから未来の可能性を感じさせるような技術がなかなか聞こえてこない、と感じている人は少なくないだろう。だが、マイクロソフトには、コンピューティングの世界を一変させてしまうのではないか、とささやかれ、大きな注目を浴びている技術がある。そのひとつが、MR(Mixed Reality/複合現実)だ。

マイクロソフトが持つ最新の「MR」技術とは

VR(仮想現実)だけでもなく、AR(拡張現実)だけでもない。物理的現実と仮想現実の2つの現実が融合したまったく新しい世界。このMRを実現しているのが、マイクロソフトが開発したデバイス「HoloLens( ホロレンズ)」。これを頭に装着し、ホロレンズを通して現実世界を見ることで、MRは可能になる。

マウスもキーボードもいらない。ジェスチャーで操作する。ホロレンズを介して見えるのは、バーチャルとリアルが一体化した世界だ。空間に3D画像が浮かび、Excelデータが浮かぶ。店舗づくりは、現地でバーチャルを組み合わせたイメージづくりが施工前に可能だ。すでに、さまざまな用途での活用が始まっているが、開発やプレゼンテーションの世界を一変させる可能性を秘めている。自動車開発、建設、パイロットや整備士のトレーニング……。書籍では、このMRを生み出した天才科学者、アレックス・キップマン氏にもインタビューしている。