衝撃的なニュースが世界に流れた。時価総額世界一を続けてきたアップルが、一時、約8年ぶりに首位の座を明け渡したのだ。驚きは、その相手だった。「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社)ではなく、マイクロソフトだったのである。『マイクロソフト 再始動する最強企業』(ダイヤモンド社)の著者・上阪徹氏は「驚きはまったくない」という――。

100兆円企業三つどもえの戦い

世界を代表する、3つの巨大企業の「時価総額」争いが激しさを増している。

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11月27日に、時価総額世界1位の座をアップルからマイクロソフトが奪還。さらに、12月3日にはアマゾン・ドット・コムが2社を一時的に抜いた。12月3日終値ベースの時価総額首位にはアップルが返り咲き、8770億ドル。2位はアマゾンで8666億ドル。3位にはマイクロソフトで8604億ドルとなった。日本円にして100兆円近い時価総額というとんでもない次元での、抜きつ抜かれつが起こっている。

中でも注目すべきはマイクロソフトの「再躍進」だろう。2013年にエクソンモービルを抜いて以来、時価総額首位を走ってきたアップルを、一時的とはいえ、マイクロソフトが抜いたのは約8年ぶりだった。アップルを抜いた相手が成長著しいGAFAでなくマイクロソフトだったことに、驚いた人も少なくなかったようだ。

マイクロソフトを株式市場が評価する理由

とりわけ日本では、マイクロソフトに今、何が起きているか、気づいている人は極めて少ない。スマートフォン時代に乗り遅れた、一昔前のオールドカンパニーというイメージを今なお持っている人がほとんどである。だが、株式市場ではそうではない。

実は2015年秋、マイクロソフトは創業から40年目にして、株価が最高値をつけていた。あのビル・ゲイツの時代よりも高くなったのだ。それだけではない。マイクロソフトの株価はその後もどんどん上昇。2018年の夏には100ドルを超え、最高値をつけた2015年秋の2倍に達した。世界中の投資家たちが、マイクロソフトにかつてないほどの期待をしているということである。

全盛期は過ぎ去ったと思われていたマイクロソフトに何が起きたのか。その象徴こそが、2014年、3代目のCEOに就任したサティア・ナデラ氏だった。私はこの翌年、日本法人の平野拓也社長に取材をしたとき、驚くべき話を聞くことになった。新しいCEOは、マイクロソフトという会社を作り替えようとしている、と語っていたのだ。売上高10兆円、12万人を擁する会社を、である。

だが、それは本当だった。だからこそ、これほどまでに株価は上昇し、アップルを抜き去るところまで評価されたのだ。CEO就任時、サティア・ナデラ氏は47歳。インドに生まれ、21歳の誕生日に渡米。1992年にマイクロソフトに入社している。会社を大きく変えたのは、20年以上この会社にいた人物だった。逆にいえば、そういうことができる人物をCEOに抜擢(ばってき)した、と見ることもできる。これこそ、マイクロソフトの慧眼(けいがん)だろう。