大手メディアは記者を紛争地には送りたがらない

朝日新聞も社説(10月26日付)のテーマに取り上げ、ジャーナリストの仕事の一端をこう書く。

「紛争地に入り、そこに生きる人びとの声を報じるのはジャーナリストの重要な責務である。ミサイルや銃弾が飛び交い、子どもらまでもが傷つく戦争の悲惨な現実を、第三者の立場から公正に伝える。そのために、各国の記者は使命感をもって危険な取材にあたっている」

まさにその通りなのだが、朝日新聞をはじめとする大手メディアは自社の記者を危険な紛争地には送りたがらない。記者が負傷したり、命を落としたりした場合、報道局幹部の責任が問われるからだ。

記者会見には出ず、ネット上で無責任に批判する

そのため大手メディアは安田さんのようなフリージャーナリストを臨時に雇って紛争地に派遣する。命を懸けるには極めて少ない報酬だが、フリージャーナリストもそれによって生活費を得ている。これがひとつの現実である。

その厳しい現実を知っているのか、知らないのか。ネット上では一方的に安田さんを批判する声が大きいようだ。おかしな話である。

安田さんを批判したいのであれば、記者会見に出席して正々堂々と自己責任について質問すればいいではないか。

ジャーナリストの仕事をどう考えているのか

安田さんのようなフリージャーナリストの存在は欠かせない。なぜなら戦争や紛争では政権や反勢力はどうしても自らに都合の悪い情報を隠そうとするからだ。危険を承知で現地に入って実態を報道するジャーナリストの仕事があって初めて事実が明らかになり、国際世論が動く。

かつてベトナム戦争の時は多くの記者やカメラマンが現地に入った。そのなかにはフリーランスの人間もたくさんいた。沙鴎一歩が新聞記者になったのは、そんなジャーナリストたちの命を懸ける仕事ぶりに憧れたからだ。

あのころ自己責任論を使って彼らを批判する人はひとりもいなかった。いまネット上で批判を繰り返す人たちは、過去のジャーナリストたちの活躍の歴史を知らないのではないか。ジャーナリストの仕事をどう考えているのだろうか。