ネットから実店舗への流れをいかにつくるか

ショールーミング対策が重要な業界の1つが家電量販店です。私のゼミでは、ベルクのフレームワークを参考に、業界大手のヤマダ電機の現状分析を行い、2015年12月に同社の山田昇CEO(当時)と主要な役員を前に、ショールーミング対策のプレゼンを行いました。その提案内容を紹介します。

(1)オムニチャネルの構築

オムニチャネルは、実店舗でもネットでも買えるといった単なる販売チャネルの羅列ではありません。それらがシームレスにつながり、利便性を高め、顧客を囲い込むための手段です。

昨今は、ネットで情報収集を行ってから実店舗で実際の商品を確認し、自身の判断材料を揃えたうえで商品を購入する行動が一般化しています。野村総合研究所の「生活者1万人アンケート調査」(15年)によれば、ネットで商品を検索した後、実物を店舗で確認する人は6割強に上ります。このことを踏まえると、ネットで商品検索をしてもらってから、実店舗へ送客する流れをつくることが有効です。

ヤマダ電機には「ヤマダウェブコム」という家電の通販サイトがありますが、同社のアプリではその商品検索にたどり着くまでのプロセスが多く、使いづらい面があります。この仕組みから、同社では店頭販売が主で、ヤマダウェブコムは店頭販売の付属と捉えていることがうかがえます。そこでまず、アプリの起動と同時に最新で豊富な情報量のヤマダウェブコムを表示させるよう改め、商品検索までの過程を短くし、利便性を高めることを提案しました。

次は、実店舗へ送客する方法です。消費者が商品検索を行い、好みの商品があれば「お気に入り登録」をしてもらい、その情報が実店舗に伝わるようにします。そして、その消費者が来店したら、「iBeacon」(スマホを通じて位置情報を把握したり、特定のスマホに情報をプッシュ通知できる技術)を使い、その商品の売り場までの地図を表示したり、在庫の有無を確認したりできるようにすることなどを提案しました。ヤマダ電機での購買体験を、より満足度の高いものにするためです。