USJ再建の立役者であり、日本を代表するマーケターである森岡毅氏は、「日本企業の多くはマーケティングを知らない」という。その代表例が小売業界。アマゾンなどネット通販が台頭するなかで、リアル店舗は依然として価格や品揃えで対抗しようとしている。森岡氏は「それでは勝負にならない。小売業界は買い物の価値自体を再定義すべきだ」という。その具体的な方法とは――。
森岡毅氏

日本にマーケティングがなかった理由

――業績をV字回復させたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を卒業したあと、マーケティングの精鋭集団である株式会社「刀」を設立して1年あまり。以前から「日本企業にはマーケティングが足りない」とおっしゃっていますが、状況は変わりましたか。

もちろんマーケティングができている日本企業もあります。ただ、必要の度合いに比べると、まだ著しく伸びる余地がある。こんなにマーケティングが普及していないのに世界有数の経済大国を築いた日本企業はむしろすごい。

マーケティングが必要なのはハイテク商品よりもローテク商品なんです。たとえば私がUSJの前に在籍していたP&Gのヘアケア製品がそう。シャンプーは商品の性能自体ではそこまで差をつけられない。商品にあまり差がないからこそ、マーケティングで勝負するしかないともいえます。質の高いものづくりで発展してきた日本企業にマーケティングが必要なかった理由はそこにある。

品質がいいだけでは売れない時代

今後、日本は少子高齢化で内需がどんどん落ちていく。日本企業は海外に出て行かざるをえません。海外に進出すればガチンコのグローバル競争にさらされます。日本の商品は質は高いですが、いまのグローバル市場では高い品質があれば自動的に商品が売れるという訳にはいきません。戦略的に作って戦略的に売っていかなければ企業が生き残ることはできません。

つまりマーケティングが必須なのです。しかし日本企業はここが弱い。外貨を稼いで日本人が食べていくために必要なのはマーケティングの力です。マーケティングは日本経済を救えると信じています。

そもそも日本人は勤勉で協調性を重視する集団の力がある。これに高度な技術力を活かすマーケティングが加われば、日本は飛躍的に稼げるようになるでしょう。