人事のプロが育ちにくい日本企業

2016年の終わりに6年半在籍したUSJを卒業し、マーケティング集団「刀」を立ち上げ、日本企業のマーケティングのお手伝いもしています。多くの日本企業の人事部の方は、情熱をもって働いていますが、大規模な人事変革の経験者は少ないのが現状です。

森岡毅『マーケティングとは組織革命である』(日経BP社)

人事というキャリアは、そもそもが保守的なのに加えて、年功序列が根強い日本の大企業には「私はあの会社の人事を改革しました」「この会社も変えました」というプロフェッショナルがそもそも生まれにくく、いたとしても中途で採ってもらえることが少ない。

多くの日本企業には、「組織をどう変えるべきか」というベンチマークがありません。私の限られた経験ですが、培ってきたノウハウをお伝えできればとこの本を書きました。

マーケティングに数学は必要ない

――最後に一つ。優れたマーケターになるには森岡さんのように数学の才能が必要ですか?

まったく必要ありません。優秀なマーケターは論理的ですが数学そのものができる人はむしろあまりいません。私が持ち合わせていない素晴らしい感性の持ち主はたくさん居ますが、私のように数字を駆使するのは非常に珍しいタイプです。

人間の能力を360度とすると、私は数学も含めて5度くらいの狭い能力に得意なことがある。感性など、ほかの355度は全然ダメ。ただ、感性ではなく数字で極めて論理的にマーケティングをやってきたから、マーケティングを皆さんに伝わるように説明し書けるようになったのかな、とも思っています。

 
森岡毅(もりおか・つよし)
株式会社 刀 代表取締役CEO
1972年生まれ。神戸大学卒業後、96年P&G入社。ブランドマネージャーとして日本ヴィダルサスーンの黄金期を築いた後、2004年にP&G世界本社(米国)へ転籍、北米パンテーンのブランドマネージャーなどを経て、2010年にUSJ入社。12年、同社CMO、執行役員、マーケティング本部長。USJ再建の使命完了後、17年、「株式会社 刀」を設立し、マーケティングを普及させることで日本を元気にする活動に邁進する。最新刊に『マーケティングとは組織革命である』など。
(構成=長山清子 撮影=入江英樹)
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