一線を越えた、父純一郎氏の暴走

進次郎氏に何があったのか。そこで着目しなければならないのが父、純一郎氏の存在だ。純一郎氏は政界引退後、「脱原発」に目覚め、熱心に全国行脚しているのはよく知られている。

その小泉氏は7月15日、自由党の小沢一郎代表が主宰する政治塾に招かれて講演。「小沢さんとは味方になったり敵になったり。今はもう、わだかまりは全くない」とかつての仇敵を持ち上げた。その後、2人は酒を酌み交わして政治談議をしている。

純一郎氏は2014年の東京都知事選で細川護熙氏を支援するなど、地方の首長選に関わることはあった。その際、今は息子が所属する自民党が推す候補と対立することも少なくなかった。ただし、国政とは一線を画していて、後輩でもある安倍氏に対しても一定のリスペクトを持って接していた。

小沢氏との接近は「脱原発」で一致したというのが大義名分にはなっている。しかし小沢氏は、あらゆるものを政局に利用する人物であることは誰もが認めるところ。今は、立憲民主党の枝野幸男代表を中心に野党結集して自民党に取って代わろうという夢を抱く。その小沢氏とのタッグ結成は、地方選で野党系候補を支援するのとはレベルが違う。まさにレッドラインを越える行動だ。

安倍氏は純一郎氏を「小泉」と呼ぶこともある

自民党幹部は純一郎氏の暴走を、苦々しく思っている。安倍氏も例外ではない。安倍氏は先輩である純一郎氏のことを「小泉さん」と呼んできたが、最近は親しい人物と話すときは「さん」が消えることもあるという。純一郎氏は講演で「小沢氏とのわだかまりはなくなった」と語ったが、安倍氏は純一郎氏に強いわだかまりを持った。

進次郎氏もさすがに現状はまずいと思っているようだ。進次郎氏自身、これまで党を批判するような言動を繰り返してきたが、それは党内に多様な意見があることを示そうと思ってのもの。自民党にとってよかれと思ってやってきた。父親の行動は反党行為と言われてもしかたがない。

進次郎氏の言動が最近おとなしくなったのも、父の暴走に気をかけてバランスをとろうとしているとみてよさそうだ。純一郎氏が小沢氏と会談した15日以降、進次郎氏の動きが目に見えて「穏便」になっていることからも、そのことがうかがえる。