「ミスを恐れず、攻める気持ちを忘れない」

初めて米ツアーに参戦した17年。畑岡は、慣れない環境、コースへの適応に苦しんだ。19試合に出場し、予選落ち11回(棄権1回)。と不本意なシーズンに終わった。

一時帰国の際、畑岡に今シーズンのテーマを聞くと「ミスを恐れず、攻める気持ちを忘れない」という言葉が返ってきた。

「アメリカではピンポジション(グリーン上のカップの位置)が難しいので、たとえば池を避けてグリーンを狙うと、仮にグリーンに乗っても、その後のパットでピンチに陥るようなケースが多いんです。ミスを恐れず果敢に攻めていく気持ちがなければ勝負にならない。逃げている場合じゃない。そのことを、17年の経験から学びました」

淡々とした口調の中に、昨シーズンの悔しさと、リベンジに向けた闘志が伝わってくる。その言葉を裏づけるように、今シーズンのLPGAツアーでは4月末のメディヒール選手権で7位タイ、5月下旬のキングスミル選手権ではプレーオフで敗れたものの2位タイ、5月末のボルヴィック選手権では10位タイ。そして6月頭に開かれた初出場の全米女子オープンでも10位タイと4戦連続でトップ10入りを果たし、日本選手の中で先頭を走り続けた。メジャー初制覇を期待させる成績を残している。

プロ転向を発表する会見の席で、畑岡は「2年以内に米ツアー優勝」「5年以内に海外メジャー制覇」という目標を掲げた。さらに取材時には、「東京五輪で金メダル獲得」という大きな目標も明言した。

「世界一」――これほど明確な目標はない。恩師・中嶋常幸の言葉どおり、この目標への道筋をはっきりと見つめ、ムダのない努力を積み重ねているからこそ、畑岡奈紗の姿は自信にあふれて見えるのだろう。(文中敬称略)

▼畑岡奈紗選手の歩み
1999年1月
茨城県笠間市で出生。アメリカ航空宇宙局「NASA」にちなみ、「前人未到のことをするように」という想いで“奈紗”と命名される。
2007年4月
小学3年時、岩間第二小学校時代に地元の野球チームに加入。セカンドを務める
2009年3月
茨城県・宍戸ヒルズカントリークラブに勤務する母親の影響でゴルフを始める
8月
小学5年時、野球チームを辞める
2011年4月
笠間市立岩間中学校に入学。陸上部に所属する
2012年4月
中嶋常幸プロの主宰するヒルズゴルフ トミーアカデミーに入会する
2013年10月
陸上競技200m走で県大会入賞
2014年4月
翔洋学園高校入学
12月
ナショナルチーム候補選手に選出
2016年4月
ルネサンス高校へ3年時に転入学
7月
世界ジュニアゴルフ選手権連覇
10月
日本女子オープンで史上最年少&史上初のアマチュア優勝史上最年少でプロ転向を表明
12月
米女子ツアー出場権獲得。渡米
2017年1月
森ビルと所属契約を結ぶ米女子ツアーを主戦場としてプレー
9月
ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメントでプロ転向後初優勝
10月
日本女子オープン連覇
2018年1月
2年連続での米女子ツアー参戦
4月
米メデイヒール選手権で7位タイ
5月
米キングスミル選手権で2位タイ、米ボルヴィック選手権で10位タイ
6月
全米女子オープンで米メジャー自己最高記録の10位タイ
(撮影=小田駿一、研壁秀俊 写真=時事通信フォト、共同通信)
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