全国18カ所にゴルフ場を展開する太平洋クラブは、2012年に経営破綻。その後、スポンサーとなった遊技業界大手のマルハンによって「名門ゴルフ場」として復活した。このうち最も力を入れたのはコース管理とキャディ教育だったという。『名門再生 太平洋クラブ物語』(プレジデント社)を出したノンフィクション作家の野地秩嘉さんが書く――。(第3回/全4回)
御殿場コースチーフグリーンキーパーの阿佐比一さん
写真提供=太平洋クラブ
御殿場コースチーフグリーンキーパーの阿佐比一さん

「全コース黒字化」のためにまずやったこと

1971年に設立されたゴルフ場のグループ、太平洋クラブ。18のコースを持つまでに発展したが、2012年、会社更生法の適用を受けた。2014年、遊技業界トップのマルハンが買収し、社長に就任した韓俊が数年で立て直し、今はすべてのコースが黒字化している。

韓俊が力を入れたのはコースの整備とキャディサービスの向上だった。

わたしはコース管理の統括者、チーフグリーンキーパーと超優秀キャディに太平洋クラブのメンテナンスと接客サービスを聞いた。

朝一番のプレーヤーのために5時半には出勤

ゴルフ場を商品と考えた場合、主要な要素はコースだ。コースの設計がよく、メンテナンスされていて、しかも景色が良ければ人気が出る。

太平洋クラブの改革はコース管理にも及んだ。コース管理とはフェアウェイ、ラフの芝刈りや落ち葉を集めて拾うこと。加えてバンカーの整備、グリーン作りと整備、コース内通路の安全点検、そしてコース全体に散水すること。

担当するのがコース管理部。部員たちを統括するのが各コースにひとりずついるグリーンキーパーだ。

彼らの仕事は自然が相手だから年中無休である。土日や祝日、連休はない。夏休みも正月も働く。

コース管理部員の朝は早い。午前8時に1組目がスタートするとすれば、彼らは2時間半前の午前5時半には出勤している。となると、起きるのは午前4時過ぎといったところ。卸売り市場で働く人たちと同じように超早起きの生活なのである。

出勤したらすぐにコースに出ていく。芝を刈ったり、ブローワーで落ち葉を吹き飛ばしたりする。芝刈り機やブローワーは大きな音を立てるから、プレーヤーがコースを回り始める前に終えておかなくてはならない。

ただ、すべてを2時間で終えるのは無理なので、アウトの1番、インの9番コースから芝刈り機やブローワーを動かしていく。グリーン上にカップを切り、プレーヤーたちのスタートに備える。バンカーならしは機械でやるのだが、前日の夕方に済ませておくことが多い。

基本的にゴルファーがプレーしている時間には管理作業を行うことはない。