お客のためなら芝の管理方法も変える

うちのグリーンはエアレーション(コアリング)をしないことになっているんです。エアレーションとはグリーン面に穴をあけること。通常だと春1回、秋1回やるんです。

芝は根で養分を吸収するのですが、呼吸もしています。芝が育つにつれ、次第に土壌が固まり、根のために悪い状態となる。そこで、エアレーションをすると、密生した根茎をほぐして発根を促し、通気、通水性をよくして、芝を若返らせることができる。それでやるのですが、グリーン上に穴が開いていると、ボールがスムーズに転がらない。それはお客さまに迷惑だからやめることにしました。

その代わり、私たちがやっているのは穴をあけると同時に、砂を厚くく。そして、棒を差して、穴を作り、ブローワーという機械で穴の中に砂を入れ込む。そうすると見た目は平らになる。多少は凹凸は出るけれど、穴をあけるよりはいい。それに砂ですから、通気性、通水性がよくなります。お客さまに迷惑をかけないために御殿場コースが開発したやり方です。

異例の「全国転勤するキャディ」

太平洋クラブには361人のキャディがいる。新卒募集に応募してきた高校卒の人から、八千代コース(千葉県)のように新しく加わったコースに元から在籍していたベテランもいる。

太平洋クラブのキャディ
写真提供=太平洋クラブ
キャディは常にコースガイドを持ち、正しい距離を伝えるよう心掛けているという

キャディになる人たちはそれぞれの物語を持っている。

コースが近所にあるから、「パートで働いてみよう」と思った人。プロゴルファーを目指して研修生としてコースに勤めていたが、望みがかなわずキャディ専業になった人。他のゴルフ場でキャディをしていたけれど、太平洋クラブにあこがれて入社してきた人……。

さまざまな理由でさまざまな年齢のキャディが集まっている。

中田有紀さんは地元で生まれて他のコースでキャディをしていた。

「テレビで御殿場コースを見て、こんなにきれいなところがあるなら、そこで働きたい」と思った。それで応募して2013年に入社。マルハンが買収する前で、太平洋クラブの経営が混乱している頃だった。入社して、経営者が変わり、キャディ教育が変わった。

――それまで勤めていたコースはちゃんとした教育システムはなくて、とにかく先輩について、コースを覚える。できるようになったなと先輩が判断したら、『じゃあ明日から行ってみよう』でした。太平洋クラブに入ってからは、しっかり教えていただいたと感じています。