世界ではクラブチームが育てるのが当たり前
「サッカー少年を育てる」
日本における、その育成環境は特殊だと言えよう。
欧州・南米で、サッカー選手はほとんど例外なくクラブチームの下部組織で育っている。リオネル・メッシも、クリスティアーノ・ロナウドも、下部組織からトップチームへの階段を上っていった。シャビ・アロンソのように、育成目的だけで存在するクラブ(アンティグオコ。スペイン・バスクのチームで、育成した選手を売ることで経営している)で育てられることもあるが、その場合も教えを受けるのはあくまでクラブチームだ。
一方、日本の主流は学校の部活動である。
Jリーグ創設以来、クラブチームはハード面で恵まれ、指導者もプロ契約をしている。環境は部活チーム以上に充実しており、必然的に地域の1、2番手の選手がクラブチームを選ぶ。にもかかわらず、いまだに有力選手が多く出るのは部活からだ。ロシアワールドカップの有力メンバー、長谷部誠、本田圭佑、長友佑都、岡崎慎司、大迫勇也、乾貴士、昌子源、大島僚太、川島永嗣、直前の招集から漏れたが、代表の常連だった森重真人、昨年のJリーグ得点王の小林悠、MVPの中村憲剛は、いずれも部活チーム出身だ。
なぜ、日本では部活チームから好選手が生まれるのか?
「部活でメンタルは強くなった」
その昔、部活チームの練習は合理性を欠いていた。
多くの指導者は理不尽な鬼だった。その機嫌次第で、選手はグラウンドを何周も走らされることもあったという。もしチームが恥ずかしい負け方をしようものなら、タッチラインに選手を並べて片っ端からビンタを食らわせることもあった。
そして先輩の後輩に対するシゴキは、単なるストレスのはけ口になっていた。後輩は不条理なしごきに耐えることが、その競技を続ける条件だった。夜中、虫の居所が悪い先輩に板の間に正座をさせられ、膝の上に雑誌を積み上げられるような経験のあるサッカー部員も少なくないだろう。
信じられないことだが、90年代前半まではそんな関係がまかり通っていた。
そして当時の経験を笑い話にし、楽しそうに語る人がいる。実際、その状況から多くの優れたアスリートも出た。
「メンタルは強くなった」
そう漏らす選手も、実は多いのだ。
では、鬼監督や先輩のシゴキは、精神を強化したのだろうか?