リーダーの能力とは働く人たちのモチベーションを上げること

リーダーの最大の仕事は、ともに働く人たちのモチベーションを上げることです。ただこれは、私自身の体験からして、かなり難しいことです。特に業績の落ち込んだ赤字の会社ほど、リーダーは「この人と一緒なら頑張りたい、努力したい」と周囲に強く思わせなくてはなりません。そのために私は、働く人たちのプライドを取り戻すための工夫をいくつも試みます。

たとえば、社員一人ひとりの業績を細かくチェックして、その実績が多少劣っていても、何かと名目をつけて表彰してきました。実際、数字で功績を表すことのできない部署の人たち、そんな縁の下の力持ちにスポットを当てることが、会社全体のやる気を引き出す導線となることが多いからです。

それは、会社の再生というのは結局のところ、社員のモチベーションが最も重要だからです。先に述べた表彰制度などを例にとっても、モチベーションを高めることに大きなコストはかかりません。現有戦力を最大に生かすためにすべき一番の仕事は、部下たちを情熱のある人間に育て上げることなのです。

部下のやる気スイッチを入れる4つの「ほめるとき」とは?

部下を動かすコツの1つに「ほめる技術」があります。ただし、ほめ言葉というものは決して万能薬ではなく、何でもかんでもほめればいいというものではありませ。相手の状態に合わせてほめ方・叱り方を変えないと、かえって部下のモチベーションを低下させてしまいます。

そこで重要なことは、部下の心理を見極めて、次の4つの状態にあるときにほめてあげるのです。

1.今成長期にあり、さらに高いパフォーマンスを発揮するために努力を続けているとき。
2.自己満足に陥り、それ以上の努力をしなくなってしまったとき。
3.スランプから脱したいという意欲はあるが、何をやってもうまくいかず、自信を喪失しているとき。
4.無気力な心理状態にあり、何かを変えようという意欲さえ湧いてこないとき。

特に部下が2や4のような状態のときには叱りたい気にもなりますが、逆にほめることで部下の“やる気スイッチ”が入るのです。

良い指示にはメモがいらない

知人の会社の話です。「ライバル社のシェアを奪え」と命じたところ、第1営業部と第2営業部の2人の部長がまったく違ったアプローチで、部下にハッパをかけたそうです。

第1営業部長は、数々のデータをもとにしてたっぷり30分、戦略を説明しました。一方、第2営業部長の訓辞はたったの1分程度。「今回はオセロ作戦でいきましょう! とにかく担当エリアでライバルに奪われたシェアをひっくり返してください。頼みましたよ」と、メモも不要なほどのコメントだけだったとか。2カ月後、シェアを取り戻したのは第2営業部。シンプルなメッセージほど、よく伝わるという好例でしょう。

長い説明はかえって焦点をぼやけさせてしまいます。伝達事項はせいぜい3分以内。優秀な人は難しい話をやさしい言葉で伝えられる人です。

あなたもぜひ、そんな能力とセンスを磨いてください。