1は、「市場が縮小しているから仕方がない」と思ったが最後、その執念は消えてしまいます。なんでも外部環境のせいにしてしまえるからです。2は、少し業績が上がると、すぐ忘れがちになる題目。3は、いつの間にか「仲良しグループ」になり、リーダーにとっても部下にとっても、組織というものが居心地の良い形態に落ち着いてしまうと、大ナタを振るう勇気が失せていくのです。

1~3を実行に移すことは意外に簡単に見えて、実は真の「執念」がないと実現できないことなのです。

リーダーに求められる「理論武装」とは?

衰退していく会社を見ていると、社員の多くは思考停止しています。何をしたらいいかわからず、ただ1日が過ぎればいいという集団でしかない企業もあります。

『2000社の赤字会社を黒字にした 社長のノート』(長谷川 和廣著・かんき出版刊)

組織の長になったとき、「やる気を忘れる」部下、「責任感を感じない」部下、「慣れに安住する」部下、「無気力が気にならない」部下、そういう部下たちを目覚めさせるのはあなたの役目です。

だからといって部下のミスを、これは良い機会だとばかりに、「いったい何年、仕事をしてるんだ!」という言い方でしっ責するのは、必ずしも有効ではありません。

私はかねがね「リーダーには知的腕力が必要」と強調してきました。頭ごなしに部下を屈服させるだけでは部下を成長に導くことはできません。自分の実力を誇示しながら部下をやる気にさせるためには、ひと工夫が必要です。

叱る場合は、「できる/できない」を問題にせず、「やる/やらない」を基準に叱るのです。「何年、仕事してるんだ」と言うより「どうしてすぐに、○○に電話しなかったんだ」と具体的に指示することが大切なのです。

部下を叱ったら必ずその倍、ほめなさい!

ミスをした部下はきちんと叱るべきです。私は「長谷川さんに叱られたときはホントに命が縮むくらい怖かった」と言われるくらい、感情むき出しで叱ります。

叱られれば当然、部下は傷つきます。自信もなくすでしょう。だからこそ私は思い切り叱ったら、その倍の時間と労力をかけてほめました。相手が傷つけば、その傷を癒(いや)すのも叱った者の義務だと思うからです。

では、具体的にどうするか?

私はミスをした経緯をたどっていくことにしています。ミスが顕在化する原因は1つか2つの小さな失敗のことがほとんどです。ですから、ミスの原因はここだと指摘し、叱ったあとはそれ以外のミスに直接関係ない部分をほめるのです。

「あの部分は君の明確な失敗だが、ミスのあとのフォローは迅速だったので、被害は少なくてすんだし、お客様にもご理解いただけた。これからも期待しているから、この調子で頼むよ」といったように。このように評価してあげることが、1つの失敗をモチベーションに変えるキッカケにもなるのです。