セブン-イレブンはリアルの世界では最先端

セブン&アイグループのなかでも、もっとも顧客中心主義を徹底していたのは、セブン-イレブンでしょう。

そもそも、1973年のセブン-イレブンの創業がそうです。

鈴木敏文元会長が日本での本格的なコンビニエンスストアチェーンの立ち上げを提案したとき、「日本では各地でスーパーが進出し、商店街のかなりの部分が衰退している状況を見ても、小型店が成り立つわけがない」と社内外で猛反対されます。

それでも、「小型店でも顧客のニーズにきちっと応えていけば、経営が成り立ち、大型店との共存共栄が可能である」と、顧客を起点に発想することにより、創業に踏みだします。

セブン銀行の設立も同様でした。

元会長が、主にセブン-イレブンの店舗にATM(現金自動預払機)を設置するための銀行設立を構想すると、「銀行のATMも飽和状態にあるのに収益源がATMだけで成り立つはずがない」「素人が銀行を始めても必ず失敗する」……等々、猛反対され、容赦ない声が浴びせられました。

それでも、「コンビニの店舗にATMがあれば、顧客の利便性は飛躍的に高まる」という顧客起点のシンプルな理由から、前例のない、流通業による自前の銀行設立という困難に挑戦していきました。

こうしたサービスの拡大は、業容を順次拡大していったアマゾンの姿と重なります。

つまり、セブン-イレブンはリアルの世界においては、顧客中心主義の最先端を走っていたといえるでしょう。しかし、それはあくまでも、店舗をベースにした顧客中心主義でした。