アマゾンにはパブリックポリシーと呼ばれる公共政策チームがある。ロビイング活動を行う部署だ。アマゾン最古参のロビイストである渡辺弘美さんは「私が入社した2008年当時、公共政策チームのメンバーは私を入れてたった5人だった。今では世界で数百名のフルタイムの社員が在籍している。仕事内容も大きく変化した」という――。

※本稿は、渡辺弘美『テックラッシュ戦記 Amazonロビイストが日本を動かした方法』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

米アマゾンのロゴ
写真=AFP/時事通信フォト
2021年9月23日、米アマゾン・ドット・コムの物流施設に掲げられた同社のロゴ(フランス・オニー)

2008年当時、公共政策チームは世界で5人だった

私が入社した2008年当時は、アマゾン内でパブリックポリシーと呼ばれる公共政策チームは世界で私を入れてたったの5人であった。パブリックポリシーというのは、企業によっては「ガバメントアフェアーズ」と呼称している場合もあるが、日本語だと、政策渉外、政府渉外、公共政策などと呼ばれていることが多い。当時は、公共政策を統括するバイスプレジデントが米国ワシントンDCに勤務する他に、米国担当1名、欧州担当1名、中国担当が1名。そして日本担当の私を入れて合計5名であった。現在のアマゾンの収益を支えるアマゾン ウェブ サービス(AWS)と呼ばれるクラウドコンピューティング事業部門は当時、米国においてもまだ黎明れいめい期であり、日本には誰も事業部門の社員はおらず、公共政策面での業務はインターネットショッピングと併せて私が担っていた。

世界中で最も在籍期間が長い社員になっていた

公共政策チームとは、分かりやすく言えばロビイング活動を行う部署である。企業によって多少の役割は異なるが、選挙で選ばれた国会議員や首長および地方議会議員、中央政府に所属する国家公務員、地方自治体に属する地方公務員、業界団体や有識者などの外部のステークホルダーとの間の関係構築や折衝を行う業務を担っている。

私にとって霞が関から外資系企業であるアマゾンに転職した際の変化は大きかったが、それと同等以上に、私がアマゾンに入社した頃と今日現在のアマゾンの姿の変化も大きい。2023年第3四半期時点で、「アマゾニアン」と呼ばれるアマゾンの社員は全世界で約150万人。その中で公共政策チームには世界中で数百名のフルタイムの社員が在籍しているが、私が世界中で最も在籍期間が長い社員になっていた。世界中のアマゾニアンの中で私よりも前に採用され在職していたのは、わずか0.3%にも満たなかった。