「テックラッシュ」により業務内容は大きく変化した

私が入社した頃の仕事は、今から振り返ればかなり限定的で日本固有の問題が多かった。アマゾンが飛躍的な成長を続けるにつれ、仕事の範囲は広がり、個々の課題も複雑で専門的知識を要するものとなり、他国とも共通する課題が増え、以前とはまったく異なる景色となった。

欧州などを中心とする「テックラッシュ」――私の入社時にはまだその言葉は生まれていなかった――により、公共政策チームは急速に拡大し、業務内容も変化していった。従来は、公共政策チームの業務は、政府から提案されたルール案に対応するという狭義のロビイング活動が主であり、対外的なコミュニケーションも聞かれたことだけ最小限に答えるという受動的なものであった。だが、テックラッシュが盛んになるにつれ、政府と対話を重ねながらともにルールを検討し、政策立案者のアマゾンに対する誤解や都市伝説を積極的に訂正し、正しく理解してもらうという方向に変化、拡大してきた。

会議室で話すビジネスマン
写真=iStock.com/Robert Daly
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ただ、公共政策チームの業務が変化する中で一貫して変わらなかったのは、アマゾニアンに浸透しているリーダーシップ・プリンシプルという原則に基づく行動であった。

ロビイング関連費用はテック業界でトップ

現在のアマゾンの公共政策チームは、数百名のフルタイム社員で構成されると述べた。チームは、大きく分けて三つのグループで構成されている。①北米、中南米地域を担当するアメリカ公共政策チーム。②それ以外の欧州や日本を含むアジア地域などを担当する国際公共政策チーム。③アマゾン ウェブ サービスに伴う課題を担当するAWS公共政策チームである。

他のテック企業と比べてアマゾンの公共政策活動がどの程度の大きさなのかを知る一つの指標としては、連邦政府向けのロビイング活動に支出されている費用の金額を見ればよい(これは米国の1995年ロビー活動開示法に基づき公開されている)。2022年のその金額は1969万米ドルであり、この金額は上下院に報告されるとともに、アマゾンドットコムのIR(投資家向け)サイトでも開示されている。米国での政治資金やロビイング資金の調査を行っている非営利組織「オープンシークレッツ」は、ロビイング関連費用の毎年の支出者ランキングを公表しているが、2022年におけるテック企業の中ではアマゾンの支出が最も多い。