まさにロスジェネは現在、ちょうど働き盛りを迎えている。子育ての時期でもあるので出産を機に会社を辞めてしまっている女性も見られるが、働く意欲と能力があり何らかの事情で働けない人以外は、ロスジェネのほとんどがすでに「労働力」になっていると考えられる。
ロスジェネの労働参画の推進と生産性の高い働き方の実現が、この国の経済・産業の成長・発展のカギを握る可能性が出てきている。しかも、労働市場の中で主要層であるロスジェネの所得が拡大すれば、国内消費にも好影響を及ぼすだろう。
女性と高齢者の「働き手」は今後大幅には増えない
一方、政府の唱える「一億総活躍社会」では「女性」と「高齢者」がクローズアップされている。女性と高齢者の中にはまだ働けるのに働いていない人が数多くおり、このような潜在労働力を労働市場に引き込むことが経済成長につながるとの発想である。しかし、本当にそうだろうか?
出産等を契機に離職したが子育てが一段落した女性、定年を機に退職した高齢者などを、再度、労働力として活用するための取り組みは、これまでに数多くなされてきた。実際、女性活躍推進法の施行、65歳までの雇用を義務化した高齢者雇用安定法の改正など、法令整備の後押しもあり、企業における女性活躍と高齢者活躍のどちらも進んできている。
下記の図2は、男女別の年齢階層別労働力率を示している。約30年間、男性60歳未満の労働力率はほとんど変化がないが、60歳以降は上昇がみられる。60~64歳男性は雇用義務化の影響があり、上昇が顕著である。ただし、この層は労働力人口の8%にすぎないことと、50代後半の労働力率より上に行くことは考えにくいので、上昇余地とそのインパクトはたかが知れている。65歳以上人口はボリュームゾーンではあるが、約30年間で数ポイントの上昇したに過ぎず、身体能力の低下や要介護状態となる人が多いため、働きたくても働けない人は加齢により増加するから、これからも大幅な上昇は期待できないだろう。
一方、日本の女性の働き方を象徴する「M字カーブ」(出産・育児期に労働力率が下がりM字を描く)も近年はかなり解消され、フラットになってきた。つまり、こちらも今後の伸びしろは大きくはない。つまり、労働力でない層を労働力として顕在化させることは、今後も続けるべき重要な経済政策であり企業戦略ではあるが、長期間にわたる労働力不足を抜本的に解決するには、それだけでは心もとないのである。