誰とでも一緒に働けるのがダイバーシティ

【三宅】言葉はコミュニケーションのためにあるわけですから、ちゃんと通じれば良いわけですよね。

ただこのところ、海外留学や海外旅行を選ぶ若者が減っています。就職先でも海外勤務が避けられがちとも聞きます。新条さんから見られて、若いときに海外体験をするということは、どういった魅力があるでしょうか。

【新条】日本人が日本にいるとマジョリティです。けれども、一歩、海外に踏み出すと、逆にマイノリティになる。「自分の常識が通じない」というジレンマを体験することによって、新しい価値観を受け入れられるということです。

ダイバーシティと言いますよね。ビジネスでは、女性活用、障害者活用の文脈で使われることが多いのですが、私はそうではないと思っています。どんな人が来ても受け入れられる。誰とでも一緒に働ける。それが真のダイバーシティだと思うんです。

そうした感覚は、海外に出て自分がマイノリティになって、実際に差別される側に立ってみないとわかりません。そんな自分の価値観がひっくり返る体験を若いうちにしておくと、何を言われても、「ああ、そんなもんだね」と聞き流せます。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』(三宅義和著・プレジデント社刊)

【三宅】最近は「グローバル人材の育成が必要だ」といわれています。新条さんはグローバル人材の要件とは何だとお考えですか。

【新条】3つのキーワードで言うと、「スポンジ」「アメーバ」「カメレオン」です。スポンジのように新しい知識や文化を吸収する。アメーバのように、どんな小さな隙間でも柔軟に入っていき、そこに自分の居場所をつくる。そして、カメレオンのように、その場、その場で変幻自在に求められる人材になる。これがグローバル人材だと思います。私自身がそうなっています(笑)。

でも、スポンジだとしても吸収するだけで終わってはいけません。それを生かし、アメーバのように形を変えて、どんな分野にも「私、行きます」と行動する。そこに入れたら、今度はカメレオンになって「私にどんな仕事でも任せてください」と手を挙げ、自信を持って処理する。そうすると、世界のどこにいても仕事も任せられるようになりますし、認めてもらえます。

【三宅】最後に新条さんから、英語を学んでいる人たちにメッセージをお願いします。

【新条】まず子どもたちには、英語習得だけを目的にしないでほしいですね。英語が話せる未来に、どんなことが待っているのか。それをポジティブに考える時間を作ってほしいです。そうすれば夢がいっぱいに広がります。

大人の人に知ってほしいのは、日本人の英語力は大変高いということです。一例を挙げると、日本人のメールは世界で一番美しい。会社員時代、欧米の人が「日本人から来るレポートとメールはすばらしい。どうしてミーティングで積極的に発言しないの?」と言っていました。既に日本の英語は世界トップレベルです。自信を持って英語力を磨いてください。

【三宅】本日はありがとうございました。

(構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴)
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