2016年のリオ五輪には世界中から約5万人のボランティアが集まったという。渡航費や滞在費は原則自己負担。それでも人が集まるのは、どんな魅力があるのか。リオ五輪に通訳ボランティアとして参加した新条正恵さんに、イーオンの三宅義和社長が聞いた――(前編。全2回)。

オリンピック・ボランティアの情報がなかった

【三宅義和・イーオン社長】今回は2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの大会ボランティアで活躍された新条正恵さんに来ていただきました。

新条さんはアメリカ、イギリスなどでの海外の生活も長く、ずっと外資系の金融機関に勤務されていました。現在は社会人向けの語学学習コミュニティ「マルチリンガルクラブ」の代表を務められています。オリンピックでの通訳はリオ五輪が初めてですか。

【新条正恵・マルチリンガルクラブ代表】そうです。大会ボランティアという立場で主として語学サービスに携わりました。

新条正恵・マルチリンガルクラブ代表

【三宅】チャレンジしてみようと思った動機は何だったのでしょうか。

【新条】大きくは2つあります。1つは、私どものクラブに「オリンピックに行って、何かボランティアがしたい」という方がいらっしゃいました。そこで、どれぐらいの英語力が必要なのか、あるいは、どういうスキルが求められるのか、といったことを調べてみたんです。

私はもともと、外資系銀行でアナリストの仕事をしていたので、情報収集は得意な方だったのですが、英語も含めた各種メディアやネットで検索しても、それに関した情報がまったく見つからなかった。それなら「もう行くしかない」と思って応募しました(笑)。実際に自分が体験してみることで、直接、お伝えできることが多いのではないかと考えました。

2つ目が、私は小学生のときから、ずっといろいろなボランティアをしていました。留学先のアメリカの大学でもそうです。また、外資系企業はCSR活動に力を入れていますので、就職してからもずっとボランティアの企画やプロジェクトに関わっていました。

オリンピックも、最初は何かできたらいいなといった感じでしたが、いろいろ話を聞いていくと、せっかく行くならオリンピックを運営する側でボランティアをしてみたいという気持ちになりました。

【三宅】当然、応募資格や選考はあるわけですよね。それはブラジルの五輪組織委員会が行うのですか。

【新条】大会ボランティアの選考は、すべてインターネットです。もう何年も前から使われているシステムのようで、「ボランティアポータル」というサイトから英語、またはポルトガル語でエントリーします。

その際、5ページぐらいのシートに、名前、国籍・居住地、今までのキャリア、得意なこと、ボランティア経験の有無、語学とスポーツでは何ができるのか、といったことを書いていきます。シートを送信すれば、仮受け付けは完了。その後は、国籍や就業経験、ボランティア経験といった属性でセレクトされるわけです。