まずは「風俗営業」の許可をとる必要がある。また、午前0時以降も営業する場合には「深夜種類提供飲食店営業」の届け出が必要となる。ほかにも、店で軽食やお通しなども提供するので「飲食店営業許可」が必要だ。店の収容人員が30人以上の場合などには、消防法の規定により「防火管理者」を置く必要もあり、ともに講習に参加しなければならない。

手続き的には個人事業主として税務署にも届け出をする必要がある(「個人事業の開業・廃業等届出」)。青色申告を行う場合であれば「所得税の青色申告承認申請書」も必要だ。

粗利率はおよそ7割

それ以外にも法律や各都道府県の条例で定められた、場所や設備、騒音についての規制もある。

単なる会社登記して「起業しました」というよりはるかに難しい。ママは遊びほうける同世代を横目に自力でコツコツと金を貯める一方、独学で学んだというから、大したものだ。

しかし疑問は深まるばかりだ。スナックに、そこまでかける魅力がどこにあるのか。「起業」後の経営コストで他業態と比較してみよう。

たとえばママ一人のこぢんまり経営。1人5000円のセット料金で焼酎(キンミヤ)飲み放題でカラオケ歌い放題(キープボトルは別料金)を、1日5人の客相手に週5日営業したとして、1カ月の売上高は50万円とする。

その原価はというと、キンミヤ1升(1800ml)で1350円。それが720mlのボトル2.5本分となり、1日5人分なので2升を使用する。それで2700円。1カ月で5万4000円だ(原価率は10.8%)。水光熱費は業態によりけりだが5%前後。カラオケはリース代+著作権料で月々15%前後。おおよその粗利率は70%前後となる。

ほそぼそとであれば息は長い

他業種はどうか。飲食店は粗利率70%前後が理想だといわれるが、実際はロスも含め、60%あればいいところだろう。粉もので原価率が低いとされるラーメン屋が粗利率70%前後といわれ、スナックはそれに匹敵する。

注目すべきはその先の利益率だ。いくら粗利率が高めのラーメン屋でも、1人の客の単価は千円前後。それでスナックと同じように1日5人の客で週5日営業したとすると、1カ月の売り上げは10万円前後。それで果たして家賃や人件費をまかなえるだろうか。他の飲食店も利益率でみると20%~30%が理想といわれるが、実際は10%を切っている店は少なくない。