業種を越えたバトルロワイヤルが始まった
最近発売された雑誌「BRUTUS」(2015年11月2日号)には驚かされました。というのも、特集のタイトルがなんと「スナック好き。」だったからです。スナックと言えば、赤いソファに安い焼酎やウイスキー。カラオケから流れる昭和の演歌や歌謡曲に、年齢不詳の厚化粧のママ。まるで慣用句のように「場末の」という形容詞が頭に付く存在です。多くの人にとっては、テレビや映画の中の話であって、自身が足を運ぶ場としては、なかなかイメージしにくいのではないでしょうか。そんな不思議な「スナック」という飲食業態を、時代に敏感な雑誌がまるまる一冊使って特集しているのです。そこにはおそらく何らかの「兆し」があるということでしょう。
さて、スナックの話は一旦置いておきます。外食産業の市場規模はこの数年23~24兆円前後で推移していますが、国内の人口動態を見ても今後成長していくということは考えにくいものです。さらに、周辺領域からの「浸食」が激しくなっています。具体的には、コンビニコーヒーは喫茶店やカフェと競合しますし、スーパーやコンビニあるいは持ち帰り惣菜店の弁当やおかずも飲食店と市場を食い合います。さらに言えば、高機能の調理家電が次々と開発される中で、家庭内でも飲食店と同等か、場合によってはそれ以上においしい料理を楽しむことができるようになってきています。
こうした状況において、飲食店は改めてその提供する価値が問われています。かつては「脱サラ」という言葉とともに、ラーメン店や居酒屋が語られることがありました。そこには飲食店とは「誰でもできて、そこそこ食っていける」というニュアンスが込められていたはずです。産業としての黎明期では確かにそうした側面もあったのでしょう。しかしそれも今や昔、現在の飲食店は「わざわざお金を払って訪れるだけの価値がありますか?」と厳しい目で問われているのです。