政財界の大物が集まる銀座の一流クラブを使いこなせたら、株が上がることは間違いない。そのためには店のママやスタッフに愛される客になることだ。ではモテる客、嫌われる客の違いはどこにあるのか。この道30年のママさんに聞いた。
一流の客とは「粋な遊びができる人」
銀座に店を構えて30年の「クラブ由美」。細川護煕元首相をはじめ、政財界の重要人物が集う。一見客はお断りというわけではないが、紹介で訪れる客がほとんどだという。これぞ本物の大人のための社交場なのだろう。このような一流店ではどんな振る舞いが求められるのか。もしくは何をすると陰でバカにされてしまうのか。
由美ママによれば、歓迎されるのは「粋な遊びができる人」だという。
「銀座のクラブは基本的に、粋に、きれいにお金を使う場所なんです。何も、たくさんお金を使えってことではなく、お金とのいいつき合い方をしていただきたいということです。接待族の方の中には、店の女の子にプレゼントする花束代まで『会社に請求しておいて』なんて言う方もいらっしゃいますが、せめてそれくらいはご自分で払って、会社の経費より何倍も価値のある、生きたお金を使っていただきたいと思いますね」
つまり見られているのは使う金額の多寡よりも、「きれいに身銭を切れるかどうか」。たとえば晴れて常連と認められ、ママから「今日は○○ちゃんの誕生日だから、来てくださいね」という電話がかかってくるようになったとする。そのときすぐに来てくれるような客は、「粋な人」として歓迎されるという。
「お誕生日のような記念日にお祝いをおねだりするのは、要するに『シャンパンを抜いてください!』ってことなんです。でも高価なものですから、断られて当たり前なんですよ。そこで多少無理をしてでも、笑顔でお願いを聞いてくださる方は、スマートだし、余裕が感じられますね」
あるいは何かイベントやパーティーがあると聞けば、「しょうがないから行ってあげるよ」と出席してあげたり、「その日は都合が悪くて行けないけれど、少し寄付しようか」など、ママのペースにあえて巻き込まれてあげる人もやはり「粋な人」である。「粋」は「心意気」に通じる。金額の大小ではなく、心意気の問題なのだ。
逆に無粋なのは、「誕生日? 俺には関係ないよ。別の日に行くからいいじゃない」と言う人。こういうビジネスライクすぎる客は、冷たくされることこそないものの、特別扱いを受けることは期待できない。逆に日頃から人間関係ができていれば、店のほうもお返しをしようとそれは濃やかに心を砕くものだ。
「ママや店のスタッフに大切にされるよう、努力も必要ですよ。自分たちがよくされたら、恩返ししたいじゃないですか。いつもお世話になっている方が大事なお客様を連れていらっしゃるのなら、接待が成功するよう下調べもするし、縁の下の力持ちとしてがんばりますよ」