愚痴や他人の悪口は絶対NG

それだけでなく、普通なら知り合う機会のない世界の人を引き合わせてくれることも。由美ママによれば、「たとえば政治家のこの人に会いたい、というお客様がいらしたら、お客様同士、ご紹介することもありますよ」とのこと。先方も、「由美ちゃんの紹介なら間違いないだろう」と、会ってもいいと判断する。いわばママが保証人になるわけだ。この域に達するまでには、おそらく何年も店に通って個人的な信頼を得る必要があるだろう。そのためには、日頃からどんな飲み方をすればいいのか。まず避けるべきは、他人の悪口や愚痴である。

「銀座のクラブまで来て、わざわざ人様の悪口を言うのは野暮のひと言に尽きますが、もし始まってしまったら、『もうやめましょうよ。どうせそんな人はいつか天罰を受けますよ』と言ってしまいます。悪口はたいてい嫉妬からくるものですし、済んだことをいつまでも愚痴っているようだと、その方にも非があったのでは? と思ってしまいますね」

明るい人には人がついていく。逆に暗い人はお店でもモテないし、出世した試しがない。せっかく銀座に飲みに来たのなら、その場が華やぐような話題を選びたいものだ。もっとも、常に景気のいい話ばかりし続けろということではない。由美ママは日本経済新聞の人気コラム「私の履歴書」を例にとる。

「成功した方の武勇伝や手柄話ばかりだと、自慢されているみたいで読む気をなくすことがあります。でもたまに失敗談が書かれていると、こんなにすごい人でも、自分と似たような失敗をすることがあるんだな、と急に親近感を覚えることってありませんか?」

普段は明るい常連さんが、ごくたまに弱みを見せるときなどが、まさにそれ。弱い自分、素の自分をさらけ出せることが、人間としての可愛げにつながるのだ。