小手先の対策より、抜本的な対策を選ぶ
ドンドン出していこうという気持ちです。
2016年9月、東京都が議会でしてきた説明と違い、豊洲市場の主な建物の下に土壌汚染対策の「盛り土」がされていなかった問題を受けて、緊急会見を開いたときの言葉です。2020年東京五輪・パラリンピックの会場見直しについても、その姿勢は同じでした。膨張する五輪会場整備費の削減プランを次々に発表したのです。後から大きな問題になりそうな点は、最初に議論するのが小池流。都の幹部にも「悪い情報から共有しましょう」と語る知事。こうしたリーダーのスタンスは、ともに仕事をする人の意識を大きく変えてくれます。
あなたは、まじめな方ね!
あら、素敵じゃない!
都職員が知事室で報告する際、こう語りかけ、場の雰囲気を和ませます。「職員の緊張をほぐし、本来の力を出せるように」との思いからです。褒められて、嫌な人はいません。説明を終えた職員にチョコレートやマカロンなどのお菓子をすすめることもあります。現場との距離を少しでも縮めようとする知事の姿勢に、「都庁が明るくなった」という職員の声も聞こえてきます。
上野のパンダもしております。
2017年6月12日、東京都内で行われた婚活シンポジウムの講演会もそうでした。会場に入る前、上野動物園のジャイアントパンダの雌「シンシン」が赤ちゃんを出産したという嬉しいニュースが入ってきました。移動中に「グッドニュースね」と大喜びした知事は早速、この言葉で会場をわかせました。「さきほど、シンシンがめでたく赤ちゃんを産みました」と続け、名前を募集すると発表。さらに、改めて「子育てがしやすい東京」の実現に向け、強い決意を表明しました。そのときどきのキャッチーなニュースを取り入れ、最初の一言で関心を引き寄せてしまうのです。
タフな印象を持たれる知事は、面会した方々から「精神力の源」を聞かれることがよくあります。これが、その答えです。「崖から飛び降りる覚悟」で挑んだ東京都知事選。当選からの約1年間はメディアが注目する中、走りっぱなしでした。「私には失うものがない。しがらみや怖いものがないから、既得権にも切り込めるのよ」と語る知事は、今日も走り続けています。
いくつか紹介してきた知事の言葉には、自らの経験に裏打ちされた、説得力がいつも宿っています。そして、どこまでもポジティブ。行動は、恐れることを知らず大胆。常に前へ進みます。その一方で「子供たちの将来のために」という目的を見失いません。世界に例を見ない「人口減少社会」に突入したこの国の首都で、必要とされているのは、どんなリーダーでしょうか。私は「小池百合子」が1つの答えではないかと思っています。「今」だけでなく「未来」への責任を持つ、「親心」のようなものを知事に感じるからです。
将来のためなら、今、ぶつかり合うことはいとわない。小手先の対策より、抜本的な対策を選ぶ。親が子供の将来を一番に考えるように。それこそが、「都民ファースト」という考え方です。今後ますます、テレビや新聞で知事を見かけることも多くなると思いますが、ぜひその言葉に注目してみてください。何かに悩んでいる人にとって、一歩前へ出るヒントが隠されているはずです。
1976年、千葉県生まれ。成蹊高校、早稲田大学商学部卒。大学入学後に柔道に出合い、柔道部で2段取得。在学中に南カリフォルニア大学(USC)交換留学。全国紙記者を務め、2016年8月から現職。待機児童対策や女性の活躍推進、働き方改革などを担当し、政策立案への助言などを行う。近著に『小池百合子「人を動かす100の言葉」』(プレジデント社)がある。