1. 伝え方は、訓練して磨くもの
言いたいことを確実に伝えるためには、ポイントを絞り込んで簡潔に話すこと。私はよく「お伝えしたいことは3つです」と前置きして本題に入ります。そう切り出せば、聞くほうは「どんな話が始まるのだろう」と興味がわきますし、「熱意をもって何かを伝えたがっている」と感じ、注意を払ってくれます。
スティーブ・ジョブズが米スタンフォード大学の卒業式で語った有名なスピーチを思い出した人もいるでしょう。プレゼン上手の人はこの“三点話法”を用いることが珍しくありません。
自分の話し方を磨いていく訓練も大切です。世界で活躍するスポーツ選手によいお手本が大勢います。たとえばテニスの錦織圭さんは、試合後の記者会見で対戦相手をたたえるなど、好感度の高いスピーチで定評があります。13歳で単身アメリカ留学した先の学校では、テニスだけでなくスピーチや記者会見の訓練も受けたそうです。また、スキージャンプの高梨沙羅さんも一生懸命に英語で話して、どんどんうまくなっています。スポーツ選手がこれだけ話し方の鍛錬を積むのですから、いわんやビジネスパーソンをや、ですよ。
2. 最初に一発かましてから本題へ
女性が話す場合に、意識したほうがいいことがあります。それは相手が男性だと、「どうせ女が語ることだから」と聞く前から割り引いて考える傾向があること。特に政治やビジネスの世界では顕著なので、肝に銘じておいたほうがいいでしょう。
そのハンディを払いのけるには「この人は信頼できそうだ」「話に説得力がありそうだ」という印象を与える必要があります。それも、早い段階のほうが効果はあがります。
そういう計算より、強い思いを前面に押し出せば信頼されると考える人もいますが、初めから女性の話を過小評価する相手には通じません。
だから私は、本題に入る前に軽く笑いをとろうと工夫します。ギャグをひとつ飛ばすだけで空気が和み、「この人は話せる人だな」と親近感を持ってくれる。私が関西出身だから、笑いが大切だというのではありませんよ。男性は、そういう芸当ができる人を信頼するものです。
開口一番にとにかく一発かます。話の内容を慎重に検討するのと同じくらい、最初にどんな仕掛けができるかを考えることが大切なのです。
「今日は薄化粧で来ましたよ」
東京都知事選の演説での言葉。石原慎太郎元東京都知事から「厚化粧」とやゆされたことに対して、「男性はわがままだし、言いたいことを言う。懐を深くして受け止めたい」と前置きし、「だから私、今日は薄化粧で来ましたよ」と語り掛け、大いに場を沸かせた。