3. 言葉は時間をかけて練り上げるもの

言葉は緊張感をもって伝える。それは私が13年にわたってニュースキャスターを経験するなかで身につけた姿勢です。

誰でも「あのときはこう言えばよかった」と悔やむことはあるでしょう。私もいまだにあります。しかし生放送の場合は、あとで悔やんでも取り返しがつかないので、その一瞬一瞬に懸け、そこで出し切るしかありません。

写真=時事通信フォト

そのときに効果を発揮するのが事前にキーワードを準備しておくこと。「これだけは絶対に言おう」と決めたキーワードを用意しておき、タイミングよく話に織り込むのです。キーワードは吟味に吟味を重ねなければ聞く人の心に刺さりません。心に響かない言葉は、100万回繰り返しても伝わらないのです。

私の場合、とりわけ政治家としての公約は、相当時間をかけて言葉を練り上げています。たとえば「都民ファースト」という言葉も、私の意図することが皆さんにきちんと伝わるかどうか、さまざまな角度から検討しました。

まず、その言葉に思わず膝を打つような政策的な中身があるか、そこから強い共感を生むか、などを吟味します。環境大臣だったときの「クールビズ」や、いまや私の決めゼリフのようになっている「もったいない」もよくよく磨いたうえで使っている言葉です。

政策がどんなに立派でも、多くの人に心から共感してもらえなければ、社会を変えていくことはできません。裏を返せば、本当に中身がある政策は、ちょっと伝え方を工夫するだけで大きな共感が得られます。その効果を最大化するのがキーワードなのです。私は思いついたキーワードは必ずメモして、自分の手で書きながら常に研ぎ澄ませています。

▼小池語録

「人生を懸ける大一番のときがきたのに勝負に出ないというのでは、一体何のための人生でしょうか」
都知事選への立候補を表明したときの胸の内を語った言葉。「プレジデント」誌のインタビューに対し、父親から「やれることはやりなさい」「失敗したらあなた自身のせい。責任は自分で取るものだ」と繰り返し聞かされて育てられたことを紹介しながらの決意表明。

「都民ファーストの旗印のもと、私は皆さんの先頭に立って、これまで見たこともなかったような都政づくりに挑んでいく」
2017年1月4日、年頭に当たって都の職員に向けて挨拶した際の言葉。強いリーダーシップを感じさせる一方、「皆さんとならば都民の夢、希望を実現できる都政をつくっていけると私は確信した」「共に頑張ってまいりましょう」と締めくくり、職員への期待も伝えている。