日本一の活火山、富士山はいつ噴火してもおかしくない状況にある。懸念されているのは、溶岩流や火山灰による被害だけでなく、大地震との「ダブル被災」だ。東京都知事政務担当特別秘書、宮地美陽子さんの著書『首都防衛』(講談社現代新書)より、一部を紹介する――。(第3回/全3回)
富士山と新宿の高層ビル郡
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富士山の噴火ペースは約31年に一度

新型コロナウイルスの感染拡大まで年間20万人を超える登山者が訪れた日本最高峰の富士山は、溶岩や火山灰を噴出して現在のシルエットが形成された。直近の噴火は1707年の「宝永噴火」まで遡るが、富士山はまぎれもなく日本一の活火山だ。

2021年に富士山噴火を想定したハザードマップが改定され、関係自治体は“休眠状態”から目覚めることを警戒する。だが、最も危険なシナリオは「地震」と「噴火」の連動であることを忘れてはならない。

富士山は、フィリピン海、ユーラシア、北米(オホーツク)という3つのプレート境界に位置する我が国最大の玄武岩質の成層火山だ。前回の「宝永噴火」から300年以上が経過しているため「富士山はもう噴火しない」と誤解している人もみられるが、過去5600年間には約180回もの噴火が起きてきた。単純計算すれば約31年に一度のペースで、休眠状態にある今日が“異常”と言える。富士山の長い歴史を紐解けば、「いつ噴火してもおかしくない」と見ることもできるのだ。

「地震」が「噴火」を誘発する?

注目すべきなのは、「地震」が「噴火」を誘発するとも考えられることだ。内閣府によれば、20世紀以降に世界で発生した大地震の発生後、数年以内に誘発されたと考えられる火山活動が相次いでいることがわかる。

たとえば、20世紀最大の噴火とされる1991年のフィリピン・ピナツボ火山噴火は、1990年7月のフィリピン地震の11カ月後に噴火した。2004年のインドネシア西部スマトラ島沖地震が起きた4カ月後にはタラン山、1年3カ月後にメラピ山、3年後にケルート山が噴火。日本でも2011年の東北地方太平洋沖地震発生後に北海道から九州にある22の火山で火山性地震の増加がみられている。

東北大学の西村太志教授(地球物理学)は世界の地震と噴火の関係を解析し、大地震による火山噴火の誘発メカニズムを明らかにした。強震動だけでは火山噴火を誘発するとは言えないものの、大地震発生の応力解放によって膨張を受ける火山はマグマ内の気泡成長などによりマグマ上昇が促され、噴火が発生しやすくなる。