「膨張場」にある火山は噴火頻度が2~3倍高まる
ペットボトル入りの炭酸水にたとえるならば、蓋を取った瞬間に圧力が緩むことで泡が上がってくるイメージだ。大地震の震源の周囲には、潰れていたスポンジが解放されたような「膨張場」と「収縮場」ができる。このうち「膨張場」にある火山(0.5マイクロストレイン以上)は大地震発生から10年ほどの間、火山噴火の発生頻度が2~3倍高まるのだという。
東日本大震災の際には東北から関東まで広い範囲に「膨張場」がみられ、西村教授は「地震で発生した『膨張場』に噴火準備ができている火山があると、地震が噴火のトリガーになるのではないか」と指摘する。
国土地理院では、数十億光年離れた天体からの電波をパラボラアンテナで受信して、プレート運動などを測定していた。約6000キロ離れたつくば市とハワイの距離を約15年にわたって測った結果、毎年約6センチずつ近づいていたが、東北地方太平洋沖地震で約65センチ接近したことがわかったという。地震直後には観測史上最大の地殻変動が生じ、震源地に近い宮城・牡鹿半島付近で5.3メートル、千葉県銚子市付近でも17センチの変動が観測されている。
噴火前の「重要なシグナル」を見つけ出せるか
東京大学の辻健教授(物理探査)らは、2016年4月の熊本地震が半年後の熊本・阿蘇山の中岳の火山活動に影響したことを解析した。地殻内を伝播する人間には感じることのできない微小な振動(微動)を利用することで、地震後、マグマだまりの近くの弾性波速度が低下したことを明らかにした。
さらに噴火後、弾性波速度は上昇した。弾性波速度とは、地盤を伝播するP波やS波の速さを表し、地盤の硬さや水圧の状態の変化を反映する。この弾性波速度の変化から、地震でマグマだまりの圧力が上昇し、噴火を誘発したこと、さらに噴火後に圧力が下がったことが明らかになったという。
辻教授は「弾性波速度や波形の時間変化、山の膨らみのデータを組み合わせ、AIで噴火前に見られる重要なシグナルを見つけ出せば、噴火の危険度を予測することが可能になる。すでにある程度の精度では予測できることが確認できている」と研究を深める。