溶岩流の避難対象者は11万6000人に上る

2021年3月に17年ぶりに改定されたハザードマップのポイントは、市街地に近い場所に過去の火口が複数認定されたこと、富士山北麓の青木ヶ原溶岩流を作ったマグマの体積が当初は「宝永噴火」と同程度だと見られていたが、この溶岩流を噴出した「貞観噴火」(864~866年)は2倍近くの13億立方メートルだったことがわかった点にある。

溶岩流の流出量が増えると、流下する距離が長く、速度も速くなることが考えられる。火口ができる場所にもよるが、山梨・富士吉田市や静岡・富士宮市などでは噴火から2時間程度で溶岩流が到達する可能性があり、静岡・裾野すその市などでは12時間後には到達の可能性がある。

溶岩流が3時間以内に到達する可能性がある範囲の避難対象者は、前回のハザードマップの約1万6000人から11万6000人と7倍になった。

溶岩流の痕跡
写真=iStock.com/VittoriaChe
※写真はイメージです

クルマや鉄道は動けず、飛行機も飛べない

2023年3月に静岡、山梨、神奈川3県などが策定した避難計画によると、避難対象地域や早期避難対象者数は拡大している。宝永噴火と同等の爆発的噴火が起こった場合、火山灰は、富士山周辺で最大数メートル以上と想定され、静岡・御殿場ごてんば市50センチ以上、神奈川県中部10~30センチ、東京都心でも2~10センチが降り積もる。

降灰の影響と対策を検討する内閣府のワーキンググループによると、首都圏への影響が最大となるケースでは除去が必要となる火山灰の量は、東日本大震災の際の瓦礫の10倍にあたる4.9億立方メートル。

降雨の場合、3センチほど積もると、二輪駆動車は走行が難しくなり、10センチ以上だと四輪駆動車でも動けなくなる。降灰中は視界不良などによって走行不能になる。鉄道のレールに0.5ミリ以上火山灰が積もると、鉄道は運行停止を余儀なくされ、飛行機は微量でもエンジン内に火山灰を吸い込むと重大なトラブルが発生するおそれがあるため空港が閉鎖。降雨があれば火山灰は導電性を帯び、停電が発生し、火山灰がアンテナに付着すれば通信障害も発生する。