人間関係を構築するうえで、成功者とそうでない人はどこがどう違うのか。それがわかれば、成功への道のりも見えてくるというものだ。世界中のVIP1000人以上に取材を重ねてきたジャーナリスト・谷本有香さんにお話を聞いた。
家族の前でも弱みは見せない
成功者は辛いとき、まわりに弱さを見せません。「もうダメだ」とネガティブな発言をすることもしません。彼らが相談を持ち掛けるのは、ビジネス上のつながりが少ない企業経営者の友人など、精神的にタフな人たちばかり。家族や部下など、自分が失敗した事実を聞いて、一緒になって落ち込んでしまうような相手には、決して弱った姿を見せないのです。相談したことで、自分を支える「周囲の力」が弱まることを恐れているのだと思います。
とはいえ、事業での失敗があった場合、マスコミなどの前で状況説明をしなくてはいけない場合があります。私も「どうしてですか? 大丈夫なんですか?」と質問を投げかける立場にいます。そんなときの彼らは、決まって非常に淡々と事実のみを説明します。そして、最終的には「今回はこういう理由で失敗したが、このような改善策を講じて巻き返していきます」と話をポジティブに転換して、私たちに明るい未来を見せてくれます。彼らは基本的に自分の能力に自信があり、ポジティブシンキングが身についているのです。
たとえばスターバックスコーポレーションのハワード・シュルツさんは、スタバの経営状態が悪化したとき「今のひどい経営状態は、すべて情報開示した。最悪だ。でも、僕にはスタバをもっと大きくする志がある。ビジョンがある。だから安心してついてきてくれ」と従業員に言ったそうです。すると、どんなに大きな失敗でも、成功への過程のひとつであるかのように思えてくるから不思議です。未来のビジョンが明確だから、社員たちも「よし、頑張ろう」とポジティブ転換できるのです。
これはかなりイレギュラーですが、「ポジティブな人」といって一番に思い浮かべるのは、さわかみ投信の創業者・澤上篤人さんです。90年代後半に起きた「さわかみブーム」で、独特の語り口調を記憶されている方もいると思いますが、あれがつくったキャラではなく「素」なのが彼のすごいところ。実際にお会いしても、いい意味で「突き抜けてポジティブ」なのです。自社の投資商品の価値が暴落したタイミングでも、「大丈夫、大丈夫!」と笑顔。不謹慎なほどのポジティブシンキングは、やはり人を束ねるトップには必要な資質なのだと思い知らされます。