野球場も“左翼”と“右翼”で見え方が違う

――見方の提示というのは、スポーツ新聞にも通じますね。たとえばデイリースポーツであれば、どれだけ阪神タイガースが負けても、その試合での阪神の「活躍」を報じています。

スポーツ紙と購読者の需給関係は理想的ですよね。デイリーは2016年の開幕戦の翌日、一面に金本知憲監督の笑顔をバーンと載せてきたんですけど、試合は阪神が負けているんですよ。でも、デイリーを買う人は、そういう作法をわかっているし、それを愛しているわけですよね。その意味では、スポーツ新聞の読者は非常に情報リテラシーが高いといえます。

――新聞の「芸風」をわかったうえで付き合っている。

それを「偏向」と言い始めるのは無粋ですし、もったいない。もっと言えば、巨人ファンはデイリースポーツを読んだほうがいいし、アンチ巨人の人はスポーツ報知を読めばいいんです。そうすると、同じ試合でも報じられ方がまったく違うのがよくわかります。実際、スポーツ新聞を楽しんでいる人はそれをやっているんじゃないですかね。

――特にネットでは、自分にとって心地よい情報だけに接していると、視点が偏ってしまいますしね。

いまは自分にとって不都合な情報をシャットアウトしがちですよね。たとえばTwitterでは気に入らない人をブロックしてしまう。それよりも、あえて敵陣営が何を書いているかを見るほうが、面白いはずなんです。いわばスポーツ観戦みたいなものですよ。野球場でもレフトスタンドとライトスタンドで、見える景色が違うじゃないですか。ずっと同じ席に座っていると、その視点が固定化されちゃうんで、たまには席を移動する。それも結局は野次馬的な視点なんですけど、僕はそこを大切にしていますね。

プチ鹿島
1970年長野県生まれ。大阪芸術大学放送学科を卒業後、大川興業に所属 。お笑いコンビ「俺のバカ」での活動を経て、フリーとなる。2012年からオフィス北野所属。スポーツからカルチャー、政治まで幅広いジャンルの時事ネタを得意とする「時事芸人」としてラジオ、雑誌を中心に活躍している。著書に『教養としてのプロレス』、『東京ポッド許可局』(共著) がある。
(聞き手・構成=須藤 輝 撮影=プレジデントオンライン編集部)
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