「居抜き出店」が8割。スーパーの苦戦は好機

それではなぜECに進出しようとしているのか。それはお客様へのサービスのためです。ドン・キホーテの商品をネットで買いたいという声をたくさんいただいています。まず10月に訪日外国人向けのECサイトを開始するのも、お客様へのサービスのためです。

私は流通業とは「変化対応業」だと思っています。次々とイノベーションを起こしていくというより、イノベーションによって起きた変化に素早く対応していくことが重要です。そして我々は流通業の中でも変化対応が上手い企業だと自負しています。

流通業では「総合スーパー」と呼ばれる業態が苦戦を強いられていますが、我々にとってはチャンスです。撤退した店舗に「居抜き」で入居できれば、コストを抑えた新規出店ができるからです。昨年度、我々は過去最高の40店を出店しましたが、このうち8割の32店は閉鎖店舗を改装した居抜き物件でした。

社内での仕事のやり方も変えています。3年前に事業会社の社長となって以来、社内会議の多くを廃止しました。その代わり、社内用のチャットツールを使うようにしました。ある課題に対して、どう思うのか。私が気になる課題を書きこむと、幹部たちがどんどんアイデアを書き込んでくれます。

会議を開けば、私が出した答えのままに仕事が進んでしまうでしょう。資料の準備なども無駄です。チャットツールであれば、スピーディに全従業員とコミュニケーションをとることも可能です。

ビジネスの環境はどんどん変化しています。そのスピードに対応するためには、会議を開いている暇はありません。おかげさまで業績は連続最高益と絶好調。今後も我々の武器である変化対応力を磨いていくつもりです。

ドンキホーテHD社長 大原孝治
1963年、東京都生まれ。93年ドン・キホーテ(現・ドンキホーテホールディングス)入社。95年取締役第二営業本部長、2005年社長室長。13年HD副社長。14年よりHD社長。
 
(國貞文隆=構成 門間新弥=撮影)
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