「働き方改革」のネガティブな側面は?
では、ネガティブな側面は出てこなかったのか。
リモートワークの事後アンケートでは2割が「生産性が低くなった」と感じている。「確かに、在宅では仕事がしにくい人たちも一定数いることが分かりました」と林氏。家ではインフラが整っていない、家族が日中在宅のケースではかえって生産性が落ちる、といった事例だ。
そうした状況に林室長はすぐ対応した。それも、「(リモートワークはやめにして)やはり出社して」という形ではなく、少しでも通勤時間などが減るようサテライトオフィスを設置することにしたのだ。横浜、千葉、その他クライアント先に近い都内の拠点を使ってもらおうと、20か所の時間貸オフィスを利用できるようにし、さらに広げていく方針だ。もちろん、会社としてはそれだけ投資をしても、仕事効率や企業価値アップにつながると判断したということだ。
しかし、長期的に社員間のコミュニケーションが失われればイノベーションを阻害することにならないだろうか。この質問に、林氏は「社内にいるからといってコミュニケーションをとれているわけでもない」。チャットなどでかえって会話が増えたというケースもあったという。
「ちょっと今いいですか」といったやりとり、また先輩の仕事の仕方を見たり近くで声を変えてもらったりすることで新人や転職者が育つという環境をどう超えられるかという問題は残る。
これに対しても、リクルートは「だから前のやり方に戻そう」という方向ではなく、ではどうしたらよりイノベーションを生むようなコミュニケーションが促進されるかということを検討していく方針だ。
結果的にワーキングマザーの意欲も上がる
こうした施策は全社的な生産性を高めているだけではなく、前回記事で書いたように以前は苦しそうだったワーキングペアレンツのモチベーションを高めている。
少し前までならば「ワーキングマザー対策」施策が、全社的にマネジメントのあり方や効率向上につながるものとして導入されているリクルート。焦点は「女性活躍」や両立支援から、働き方改革に移っている。これが結果的に女性やワーキングマザーを働きやすくする。
男女ともに活躍の場を広げ、会社を強くしていく。そんな動きがじわりと広がってきている。