「やらないとわからない、まずはやってみる」

同社のこうした動きの背景には、ホールディング化し海外でM&Aを進めてきたことも影響している。どういうことか。前出・林室長はこう語る。

「トレーニー(研修生)で海外の出資先会社に派遣される社員が、現地に行くと現地の社員は定時で帰宅していて、家族と自宅でご飯を食べるのがごく普通という環境に触れます。もっと時間生産性って上げられるということを意識して日本に帰ってくるんです」

長時間労働で成果を生み出してきた企業がその成功体験を捨て去ることは難しいはずだ。が、リクルートの場合、「メリット・デメリットをいつまでも並べて議論していてもはじまらない。やってみないとわからないので、まずはやってみる」(林室長)という姿勢から、ワークスタイル変革が実効性を持つようになっていった。

どんな取り組みでも、「フィジビリティ・スタディ(実現可能性調査)」という形で、お試し期間を設ける。例えば、「リモートワーク」については組織単位で手を挙げて参加するかどうかを決め、参加する場合には週3回は出社してはいけない、などの半強制的なルールを敷いた。決められれば「そのうえでどうミッションを達成するか」はそれぞれ考えるようになる。そんな論法に基づくやり方だ。

実際にやってみると、事後のアンケートでは半数が「生産性が高まった」と感じていた。以前は、「そんなの変えられるわけがない」とリモートワークに反対だった人が「前のやり方には戻れなくなった」と言い出すケースも出てきたという。

通勤の時間が削減できる、場所を選んだほうが集中できる、などの要因で生産性の高まりを実感する人たちが多かった。

「顧客の近くにいる、大学院に通いながらキャンパスの近くで仕事をする、など、使い方は人それぞれ。でも体験したことのない世界を垣間見ることができて、社員ひとりひとりの視界がぐんと広がったがことも大きな成果です」(林氏)