ライフイベントを支える制度・インフラを整える
「女性が自分らしく働けるということも、特別なことではなくあくまで多様性のひとつです」。性別、年齢、国籍に関係なく同じ機会を与える「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の活用)」をうたうイケア。社長はオーストラリア出身のピーター・リストさんだ。
現在女性の管理職比率は43%だが、外国人と日本人の比率、男女比とも50%ずつにするのが目標だ。その達成には、一人ひとりが長く働ける環境づくりが必須といえる。同社は、誰しも年齢によってライフステージが変わり、どのような状況にあっても働き続けられるように、という考えに立ち、制度やインフラを整えている。
具体例を挙げよう。育児休暇から戻ると3カ月分の手当が支給され、社内には保育所が設けられている。ほかにも、父親がパートナーの出産で取得できる「マタニティリーブ」という15日間の有給休暇制度、家族の突発的な病気や病院への付き添いに有給休暇が取れる制度、パートタイムでもマネジャーとして働ける制度など、人生の困難やトラブルを乗り越えるためのさまざまな制度が用意されている。
子どもを産んでも「戻りたい」と思える職場へ
こうした支援体制のおかげで、産休からの復帰率は90%になった。「女性が子どもを産んでも『職場に戻りたい』と思えるように、同時に組織自体も女性に『戻ってきてくれてありがとう』と言える環境づくりを心がけています」
昨年9月からは、同一労働同一賃金制を導入。週12時間勤務でも時給換算では差がつかず、無期雇用であるため“正社員”として扱われるようになった。このような取り組みで、長く働く社員が増えれば、その中から優秀な管理職も育つと考えている。管理職として必要な資質は「人を通してビジネスをリードできる」ことであり、「働きやすい職場環境を築ける」ことであるとリストさんは断言する。
「いつも私は“Everybody is a talent! Be yourself.(誰にでも資質がある。自分らしくそれを活かそう)”とみんなに言います。イケアが人にかけるお金はコストではない。彼らの資質を活かすために必要不可欠な投資なのです。それが結果的に顧客にとっても、ビジネスにとっても有益なのは言うまでもありません」
イケア・ジャパン President&CEO。1990年にイケア英国法人に入社。オーストラリアの店舗やイケア・カナダなどを経て、2013年1月にイケア・ジャパンの副社長に就任。14年より現職。
撮影=市来朋久 イラスト=網中いづる