コロナ禍、CAを異業種に出向させ雇用を維持
日本航空(JAL)の次期社長に客室乗務員(CA)出身の鳥取三津子氏が決まったことが注目を集めている。多くの人が驚いたのはCA出身というだけではなく、短大卒でしかもJALが事実上吸収合併した外様のJAS(日本エアシステム)出身でもあるということだ。
日本の伝統的大企業で社長まで上り詰めた生え抜きの女性がほとんどいなかったことを考えると、CA・短大卒・外様といういくつものガラスの天井を突き破った異例の女性新社長といえる。
鳥取氏は執行役員客室本部長時代にコロナ禍の大幅減便で仕事を失ったCAなどのスタッフが培った高いスキルを維持するために異業種に出向させ、雇用の維持に注力したことで知られる。その結果が今年1月2日に発生したJAL機と海上保安庁の航空機の衝突事故でCAの迅速な行動による奇跡の脱出劇につながったというのは言いすぎだろうか。
いずれしても安全とサービスの功績が認められ、23年には代表取締役専務執行役員グループCCO(最高顧客責任者)に就任した実力者である。
直近10人の社長のうち7人が東京大学卒
とはいえJALの社長といえば、1981年に就任した高木養根社長以降、歴代10人の社長のうち7人が東京大学(院含む)卒であり、前任の赤坂祐二社長も東大院卒である。近年の採用実績校も旧帝大をはじめ有名私大出身者が多い、高学歴エリート集団だ。
2010年の経営破綻後、京セラの稲盛和夫会長の陣頭指揮の下での経営再建中に航空大学校卒のパイロット出身の植木義晴社長が就任したが、それまでは営業・労務・企画部門の派閥争いが度々発生したことで知られる。
植木氏がパイロット出身、前任の赤坂氏が整備出身、今度はCA出身の鳥取氏が社長に就任し、経営再建で社内風土が変わったとはいえ、営業・労務・企画部門にとってはおもしろいはずはなく、鳥取新社長に対する風当たりが強くなるのは想像に難くない。