【弘兼】大学時代からファッション関係の専門学校に通っていたとか。

【増田】大学紛争の時代で授業がなかったから(笑)。今僕がはいているようなダメージ加工のジーンズを40年以上前から作っていました。

グラフを拡大
出版不況の中、右肩上がりの成長を続ける

【弘兼】増田さんが入社した時期、鈴屋は「青山ベルコモンズ」という商業施設の運営をはじめています。

【増田】服を作って売るという仕事がやりたかったのに、新入社員で入ったら「青山のプロジェクトに入れ」と開発事業部に回されました。そして「君は何もできないだろうから、駐車場の台数設計をしろ」と。

【弘兼】なんと、いきなりですか。

【増田】せっかく専門学校でミシンを踏んでいた技術がパーですよ。鈴屋には商業施設運営の専門家がいませんでした。当然、駐車場の台数設計のやり方を教えてくれる人もいない。素人なりに考えました。まず商業施設全体の売り上げはいくらか、そのうち車で来る人の割合はどれぐらいか。それを日割りにしてみる。

【弘兼】データがあったのですか?

【増田】いえいえ、ありませんよ。渋谷の百貨店のタワーパーキングにストップウオッチを持ちながら1日中立って調べました。1台に何人乗っているか、駐車してから何秒ぐらいで離れるか、買い物の後は何秒ぐらい出るまでに時間がかかるか。全部測って平均値を出しました。そのうえで青山ならばどれぐらいの数字になるのかを予想する。さらに、ピーク時の混雑も想定するわけです。やってみて気が付いたのは、データを取れば経験がなくても仕事ができるということでした。