アンバランスの創造で社員の力を引き出す

社長の仕事は考えることである。何を考えるか、経営方針、経営戦略を考える。このとき心得ねばならないことは、決してバランス(調和)を求めないことである。バランスがとれた状態とはうまくいっている状態である。みんなががんばって目標を達成した。みんな満足する。力いっぱいやったのだからこれ以上は無理。翌月も翌々月もこれだけやれば利益は十分出る。このままずっと続いてくれればよい。

この満足な状態は決して続かない。現状に満足すると前進が止まる。衰退が始まる。社長は社員に「これでいい」と思わせてはならない。

無謀な冒険や不可能なことをしろというのではい。人間には偉大な力がある。それを発揮していない。きっかけさえ作ってやれば、それを出すことができる。やればできる。そのために危機感をあおるのだ。新製品を開発する、新分野への進出、新店舗開設、新技法の導入とつぎつぎにバランス(調和)を壊す手を打っていく。「あとは頼む」とゲタを預ける。人はアンバランスに不安を覚え、早くバランスを取り戻そうとする。

社長の仕事はアンバランスの創造である。バランスを回復するのが管理者と社員の仕事である。その意味で経営とはアンバランスとバランスの往復運動といえる。

また人員を1割減らすというリストラもアンバランスの創造になる。1割減でこれまでと同じ生産をあげねばならない。どうするか。仕事の効率を高める方法を考える。一人ひとりに今までの1.2倍の生産をあげてもらうにはどうするかを考える。改善工夫(革新)によって、以前と同じ生産をあげられるようになる。ここでバランスを回復したことになる。

ある社長は、人をどんどん採用して膨大な人件費を払わねばならない状態を作り、この経費をたたき出し、なおかつ利益をあげるには、どれだけ売らねばならないか目標を設定した。乱暴だが経営とはアンバランスを作り出すことという基本に沿ったやり方である。

※本連載は書籍『ザ・鬼上司! 【ストーリーで読む】上司が「鬼」とならねば部下は動かず』(染谷和巳 著)からの抜粋です。

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