いつもギリギリ、遅刻常習者への処方箋
職場に発達障害の人やその傾向が強い人がいる場合、上司や同僚はどのように対応すればよいのか。冒頭の例で処方箋を示してみよう。
遅刻常習者によくあるのが、移動の最短時間しか考えないケース。電車待ちや乗り換えの時間、つまり“時間のノリシロ”が計算になく、出発時刻はいつもギリギリ。今はネットで移動時間が調べられるから、その出発時刻を徹底して守るようにアドバイスしよう。
また、アナログ時計を見た瞬間、針の位置が残像となる人もいる。出発30分前に時計を見たら、いつまでも「あと30分ある」と思い込むのだ。デジタル時計ならそれが起こらない人がいるので、ぜひ試してもらいたい。
デスクに書類の山をつくる人
デスクに書類の山をつくる人は、まず散乱する書類を1つの箱に移動させ、定期的に箱から不要なものを捨てるようにする。初めのうちは「毎週月曜の午前中」など整理作業の日時を予定に組み込み、上司や同僚が一緒に作業を手伝う。本人が手順を覚えたら、「今日の午前中は箱の整理だね」と声をかけて、忘れるのを防ぐようにする。
管理職の場合は、実際に田中氏がアドバイスした内容が参考になる。まず、売り場から戦略部門に抜擢された人の場合。
「本人の希望もあったので、私から上司に発達障害の特性を説明し、彼が能力を発揮できる元の売り場に戻したらどうですか、とすすめました」
管理職への昇進が不安だった人は、発達障害の診断が解決の道を開いた。
「私が『発達障害の可能性が高いですね』と伝えたらご本人は大よろこび。『昇進の話がきたら、その診断書を見せて、私には無理ですと断ればいいですね』と晴れ晴れとしていました」
いずれも、自分の能力が発揮できる現場で働く道を探った形だ。本人たちが活き活きと働くほうが、結果的に会社の利益にもつながる。狩猟民族系のADHDタイプは、たとえばセールスの仕事などは得意だし、農耕民族系のASDタイプは研究者や技術者に適しているということがある。