「笑い」は相手との距離を縮める最も有効な手段のひとつ。ユーモアの極意を探ってみよう。

笑わせるのは相手を元気にしたいから

ファミリーマート会長 上田準二氏
「環境が厳しくなるほど元気・勇気・夢をどれだけ持てるかで差が出ます」

「昔から人とのつきあいは好きでも、話はヘタでした。どちらかというと静かなほうで……」

自身を振り返ってニカッと笑うのは、ファミリーマートの上田準二会長だ。この上田氏、社内の会議、取引先へのスピーチ、そして取材においても巧みな話術を武器に笑いを量産する“すべらない会長”として知られる男。話が苦手だったとは驚きである。

「なんせ生まれが秋田県の県南、半年間も冬の豪雪地帯・横手ですから。東京に出てきたら、まあ訛りがひどい。同僚に『上田の言ってること、全然わからない。それじゃダメだよ』と言われ『なーに言ってんだあ~。ダメじゃねーべ!』。もともと無口で、内気で、内股歩き。それだけで落ち込んじゃうわけです」

綾小路きみまろもかくやという達者な節回し、全部紹介すると誌面が尽きてしまう。要約すれば、上京し、方言・訛りがコンプレックスで挫折しかけたが、どこの会社に勤めても悩みは一緒だと気づく。言葉の問題はいずれ解消されるだろうから、それよりもまずコミュニケーションを重視しようと決意し、それにはユーモアが必須と考えるようになった。

「相手が元気で楽しいときは、こちらも楽しい。相手がつらいと、自分もつらい。ならば上司に対しても、部下に対しても、楽しいコミュニケーションに努めようと。人を笑わせるのは相手を元気にしたいからです」

そう語ると再びニカッ。話をしていて気がつくのは、話術の巧みさもさることながら、驚いたときには目を見開き、失敗した話では顔をこれでもかとしかめる、表情の豊かさである。ただ、本人としては暗い顔にならないように気をつけるぐらいで、鏡を見て練習するようなことはない。表情よりも意識しているのは目だという。