他人にない特殊能力

最後に、指示が理解できたかを確認することも重要だ。発達障害のある人に「わかった?」と聞くと、オウム返しに「わかりました」と答えがち。しかし理解したのは1~2割ということも珍しくない。そこで本人に、仕事の内容や手順を復唱させる。その場で質問を受け、さらに「午後3時から4時は質問に来ていいよ」と相談タイムを決めておくと安心する。

「仕事の指示にそこまで神経をつかうのか」と面倒に思って発達障害の社員を排除すれば、自らマネジメント力の低さを暴露するようなもの。アメリカでは、スティーブン・スピルバーグ、トム・クルーズなど発達障害をカミングアウトしたIT企業の創業者やハリウッドスターといった有名人も多い。発達障害の特性をプラスに転換して偉業を成し遂げた人たちだ。

発達障害の特性は、見方を変えれば、他人にない特殊能力でもある。ビジネスに活かすこともできるのだ。

田中氏が言うように、誰でも多かれ少なかれ発達障害の特性は見られる。発達障害の人がわかりやすい仕事の指示は、誰にとっても理解しやすく、発達障害の人が働きやすい職場は、万人にとって働きやすい。ダイバーシティの時代に、誰もが能力を発揮できる職場環境は、意外とそこから生まれるのかもしれない。

図を拡大

図は“アイスクリーム課題”と呼ばれる発達心理学で定番の課題。BはAが公園に行ったと思っていると考える。標準的にこの問題は、小学校低学年でクリアできるといわれているが、広汎性発達障害傾向のある人はクリアできる年齢が遅れがちで、ときには大人でもわからないことがある。詳しい診断は専門医に任せるべきだが、こういった課題のほか、HPの簡単なチェックシートで発達障害の可能性を探ることができる。

 

自閉症スペクトラム指数自己診断
http://www.the-fortuneteller.com/asperger/aq-j.html
ADHD.co.jp
http://adhd.co.jp/otona/

 
(構成=Top communication)
【関連記事】
あなたの「コミュニケーション能力」1分間診断
創造力ある変人社員を120%生かすには
敵をつくる人、つくらない人は、どこが違うか
依頼事項がハッキリわかる「部下を動かす」メール
話す相手の緊張を解く、「仲間だよ」のアイコンタクト