認知症が進んでも一時回復のチャンス

認知症が軽度なら有効性は認められやすいとはいえ、トラブルが起きるリスクは減らしておきたいもの。事前にどんな手が打てるだろうか。

「遺言書をつくるときに専門医の診察を受けて診断書・意見書をつけておくと、後に認知症が進行した場合も『遺言作成時は遺言能力があった』と証明しやすくなります。また、認知症の場合にかぎりませんが、自筆ではなく公正証書遺言を作成したほうが相対的にトラブルは生じにくい」

では遺言できないほど認知症が進んでいると診断されたらどうすべきか。意思能力が低下した人に対して、後見人が財産管理をはじめとした法律行為全般を支援する成年後見という制度がある。民法では、被後見人の能力が「一時回復」して遺言する場合は、医師2人以上の立ち会い等が必要とされている(民法973条)。現実には認知症でも成年後見人をつけていないケースが多いが、

「制度を利用していなくても、同じような方式で遺言書を作成すれば、有効性は高まる」

ただ、認知症が始まる前に遺言を書いてもらったほうがいいのは言うまでもない。しかし、元気なときに遺言書の作成は切り出しにくい。いいタイミングはいつだろうか。

「私見ですが、定年して10年やりたいことをやり、一段落した70歳くらいがいい。遺言は書き直せます。最終決断ではないことを教えてあげると、親御さんも書きやすいのではないでしょうか」

(図版作成=大橋昭一)
関連記事
親に遺言を絶対書いてもらうべき9つのケース
30代から考えたい「親の相続」
遺族が喜ぶ「エンディングノート」の使い方とは?
介護の苦労が報われない遺言書を親が準備していたら
認知症でボケが始まったら、家計をどう管理するか