用途が限られるため孫の浪費を防げる

個人から財産をもらったときには、もらった人に贈与税がかかります。夫婦や親子、兄弟でも例外ではありません。ただし扶養義務者からの生活費や教育費で、その都度使い切るお金であれば、贈与税はかかりません。また未成年者では祖父母にも扶養義務があるため、孫の進学費用を祖父母が負担する場合は無税です。

では祖父母が孫に生活費として、毎月30万円を仕送りしていた場合は、どうでしょうか。孫が毎月10万円を生活費として使い、20万円を貯金していた場合には、その貯金した金額が贈与税の対象になります。贈与税は年間110万円の「基礎控除額」までは無税ですが、それを超えた部分には10%から最大55%までの贈与税がかかります。

これまで親族間で年間110万円を超えるお金のやりとりの経験がある人もいるかもしれません。マイナンバー制度が導入され、銀行口座と紐付けられれば、複数の口座の「名寄せ」が簡単になり、贈与税も厳しくチェックされることになります。

祖父母から孫に、多額の財産を無税で贈与する方法はないのでしょうか。そこで人気を集めているのが2013年に施行された教育資金の一括贈与の制度です。これは30歳までの子や孫に対して、教育資金を1500万円まで無税で贈与できるもの。信託協会によると、施行から15年9月までで累計9639億円が信託銀行に預けられています。

教育目的以外では引き出すことができませんが、用途が比較的広いのもこの制度の特徴です。1500万円のうち1000万円は学校教育法で定められた「学校等」の費用として使う必要がありますが、残りの500万円は塾や予備校、野球やピアノの教室も対象となります。また教室を通じて購入すれば、野球のグローブやピアノ、楽譜などの購入費も教育資金と認められます。

贈与を受ける孫にとっては、用途の証明が必要で面倒ですが、贈与をする祖父母にとってみれば、用途が限られることで孫の無駄遣いを防げるというメリットがあります。

孫への贈与では、毎年、教育資金を贈与すれば、同じように無税になると考える人もいます。しかし祖父母が亡くなった時点で贈与は打ち切られ、相続税がかかってしまいます。この制度であれば、すでに贈与は完了しているため、使い切っていない教育資金にも相続税がかかりません。祖父母が高齢の場合、この制度を使うのは大変有効だといえます。