「遺留分」の計算は過去の贈与分も対象
被相続人ひとりあたりの相続税の基礎控除額(無税で相続できる金額)が2015年から4割も引き下げられ、「3000万円+600万円×相続人の数」となりました。このため相続税に悩む人が増えています。
追い討ちをかけるのが、マイナンバー制度の導入です。銀行口座との紐付けが義務化されれば、名義を偽装した複数口座の「名寄せ」が容易になるため、税務署の調査は正確かつ厳格になります。
相続税のかかる「相続財産」のなかで最も大きな金額を占めるのが土地です。国税庁によると2013年分の相続財産では土地の評価額が41.5%と最も多く、次いで現預金の26.0%、有価証券の16.5%、そして家屋の5.2%でした。
私もよく「実家の相続をどうすべきか」という相談を受けます。配偶者や同居している相続人がいれば、あまり心配はいりません。実家の相続では「小規模宅地等の特例」という制度があるからです。実家の土地の評価額が5000万円だとしても、要件を満たせば80%減額され、評価額は1000万円となります。2015年には要件が緩和され、特例の使える限度面積が、240平方メートルから330平方メートルに拡大しました。
ただし先に配偶者が亡くなっていたり、同居している相続人もいなかったりするときには要注意です。その場合には、実家を相続する相続人が「相続前3年以内に国内の自己や配偶者の持ち家に居住したことがない」という要件を満たす必要があります。そもそも、「自宅を売却させてまで、相続税を支払わせる気はない」という制度だからです。
さらに、相続税以上に問題となるのが「遺産分割」です。通常、相続財産のうち実家の評価額が占める割合は高く、そこに住み続けて相続する相続人は、ほかの兄弟に比べて、多くの財産をもらうことになります。差額を埋めるには現金の支払いが必要ですが、それだけの貯金がなければ、結局は実家を売却して、現金で分割するしかありません。
遺産分割の方法には大きく2つあります。ひとつは、被相続人が遺言書で、各相続人が受け取る財産を指定する方法。もうひとつは、遺言書がない場合に、全相続人が共同で遺産分割協議書を作って、自分たちで、相続する財産を決める方法です。