▼不安ポイント
・空き家率は全国平均ですでに13%を突破
・都心でも足立区が100万円の助成を開始
・日本の住宅価格は今後20年、毎年2%下落するとの試算も

もはや家は老後資金にならない

「老後資金が不安だけど、いざとなったら親父から受け継ぐ家を売ればいいや。東京都内なんだから高く売れるはず。これで老後は安心だ」――。

残念ながら、そんな甘い考えはもはや通用しないかもしれない。新たな戸建て住宅やマンションがどんどん建てられる一方で、「空き家」がどんどん増えている。なぜ空き家になるかといえば、売れないからにほかならない。

総務省の2013年住宅・土地統計調査(速報集計)によれば、国内の総住宅数6063万戸のうち、なんと13.5%が空き家だという。これが、今の日本の現実なのだ。

「空き家が増えているのは、なにも都市部の郊外や地方に限った話ではありません。東京23区とて例外ではないのです」と語るのは、不動産コンサルタントとして活躍する長嶋修氏。

「足立区などは、空き家の適正管理もしくは解体のために最大100万円の助成をしています。世田谷区でも空き家活用のプロジェクトが始まっている。豊島区などは、日本創成会議で消滅可能性自治体とされたほど。首都圏の人口は2030年頃まではさほど減らないのですが、高齢者が亡くなると空き家として放置され、若い人は新築マンションなどに住むという構図ができているのです。さらに現在、日本の持ち家率は約60%ですが、持ち家志向の低下とともに、これからどんどん下がると予想されています」

こうした問題を背景に、長嶋氏の元へも、相続する実家の扱いや処分についての相談が多数舞い込むという。

「私のところへ来る相談者は、住宅の1次取得層である30代から40代の方が多い。その親御さんは郊外の一戸建てに住んでいたりする。『母が他界し、父ひとりで住むには広すぎる。どうしたらいいでしょうか』というのです。私の答えは決まっています。一部の確実に値上がりが見込める不動産や価値が明らかに下がらないケースを除き『売れるものなら、いますぐ売ったほうがいい』です。今後20年、日本の住宅価格は毎年2%ずつ下落するという試算もあるのですから」

老後のステージでは、家を売って現金化したくなるシーンはままある。「ひとりになったので息子夫婦の住むマンションへ世話になりたい」「階段がきついから平屋のバリアフリーの家に住み替えたい」「郊外から病院に近い街中に移りたい」「介護に備えてケア付き住宅に移り住みたい」などなど。

「みなさん『必要性が差し迫ったら売却を考える』とおっしゃる。たとえば、『家族にとって思い入れのある家だから』とか、『いま家を売ると親が、急に弱気になる気がして』などといった理由をつけて。でもそれでは遅きに失することが少なくないのです」