▼不安ポイント
・70歳の窓口負担が「2割」にアップ
・医療費負担は75歳から急増
・健保組合の多くはすでに赤字
・さらなる「負担増」はあるのか
・民間医療保険で備えるべきか

現役世代が高齢者の医療費を肩代わり

2014年4月から、70~74歳の高齢者の医療費の自己負担割合が1割から2割へと引き上げられた。窓口での支払いが2倍となる厳しい変更だが、増え続ける医療費は、健康保険制度を根幹から脅かしつつある。

現在、国民が病気やけがの治療のために医療機関に支払う医療費(=国民医療費)は年間およそ40兆円。その半分以上が65歳以上の高齢者の医療費だ。医療費と年齢の関係には、明確な相関関係がある。厚生労働省の資料によると、20歳から59歳までは自己負担と保険料の合計は医療費より少ない「黒字」だが、60歳から医療費が増えて「赤字」になる。さらに高齢になるほど医療費は増え、「70~74歳」では60.9万円、「80~84歳」で89.1万円、90歳以上になると100万円を超えるようになる。

厚労省の見通しでは、高齢化などにより、医療費は国内総生産(GDP)の伸び率を上回って増えていく(図1)。保険料ではまかないきれず、公費負担は、2025年度には現在より10兆円以上増え、25兆円に達する。つまり税金として主に現役世代が医療費の肩代わりをすることになる。

さらに状況が悪くなることも考えられる。とりわけ健康保険制度の状況は深刻だ。自営業者や非正規労働者などが加入する国民健康保険は、単年度の収支(2012年度)が3000億円あまりの赤字だ。一方、企業のサラリーマンなどが加入する健康保険組合も財政状況は厳しい。全国1419の健康保険組合が加盟する健康保険組合連合会(健保連)によると、2014年度予算早期集計では、79%にあたる1114組合が赤字で、経常赤字は全体で3689億円と見込まれている(図2)。