民法では目安として「被相続人の配偶者に2分の1、子に2分の1」などの法定相続分を決めています。ただ、これに従って、遺言書や遺産分割協議書を作る必要はありません。ではもし、被相続人が「愛人に全財産を渡す」という遺言書を残していた場合には、相続人は1円も財産をもらえないのでしょうか。

そうした事態に備えて、民法には「遺留分」という仕組みがあります。民法は残された相続人の生活が困らないように、最低限の保証として相続できる割合を定めています。遺留分の権利がある相続人は、配偶者、子供、父母で、兄弟にはありません。

相続でもめないように被相続人が遺言書で指示していたとしても、遺留分についての配慮がなければ、やはり相続人の間でもめてしまいます。遺留分を計算するときには、相続財産だけではなく、過去に贈与した財産もすべて合算して計算するということにも注意が必要です。実家に住んでおらず、遺言書によってほとんど財産をもらえなかった相続人が、遺留分を主張してくると厄介です。

実家の評価額が大きく財産が偏っている場合には、ぜひ専門家に相談してください。親族でもめることほど、悲しいことはありません。

青木寿幸

公認会計士、税理士、行政書士。1971年生まれ。アーサー・アンダーセン会計事務所、モルガン・スタンレー証券などを経て2002年日本中央税理士法人を設立、代表社員に。著書に『あなたの相続、もめないのはどっち!?』、共著に『会計天国』など。
 
(構成=稲田豊史)
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