6. 話をすり替える
得意なことを逆提案
頼まれたことは引き受ける。しかしそれと同時に、自分の要求も通すという高度なテクニックもある。
「相手がもちかけてきた話を、別の話にすり替えることです」(内藤氏)
相手がAという仕事を頼んできたら、「A´じゃダメですか?」と提案する。たとえば編集者が200ページの単行本の執筆を依頼してきたら、「今薄い本が流行ってますし、女性でも手に取りやすいように、100ページでどうでしょう?」などと、適当な理由を並べながら、自分のやりやすい形にすり替えるのだ。
あるいは交換条件を提示するという方法もある。
ゴミ捨てを頼まれたら、「じゃあ僕がゴミを捨てるので、床掃除をお願いします」。上司に急な仕事を命じられたら、「わかりました。じゃあ終わったら焼き肉おごってください」というように、引き受けてから、その代わりに何かを要求する。先方は頼みごとをしたという自覚があるので要求を呑まざるをえないし、こちらは一方的にイヤなことを押しつけられずに済み、心理的な満足感が得られるというわけだ。
7. ミスは組織のせいにする
1人で抱え込まない
根が真面目な人は、ミスや失敗をすると、「自分のせいだ」と自責してしまう傾向がある。西多氏は次のように語る。
「何かあったとき個人の責任にするのは日本人の悪い癖。たいていの仕事はチームで動いているわけですから、何から何まで100%個人の責任だとは言い切れないことも多い。そういうときは組織のせいにするのも一つの手でしょう」
医療現場では医療ミスがあったとき、事故を起こした当事者に事後処理をさせないのが鉄則だという。若い研修医などの場合、それだけで精神的に病んでしまうこともあるからだ。
実際、長時間労働や多すぎる仕事量など、システムに問題があることも少なくない。このような状況では個人で問題を解決しようとしても、かえって無力感に苛まれるだけ。問題は1人で抱え込まず、組織全体でシェアする。それは決して卑怯なことではないのだ。
立正大学特任講師。アンギルド代表取締役。
慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。日常生活で実践できる心理学に定評あり。
自治医科大学講師。
東京医科歯科大学卒業。国立精神神経医療研究センター、ハーバード・メディカル・スクール研究員を経て、現職。