即断即決できる人が優れていると思われがちだが、本当なのだろうか――。いま、優柔不断な人の“結論延期能力”が高い注目を集めている。経営者のキャラクターもさまざま。まず、自分の性格や資質を伸ばすことを考えよう。
──あのときの決断は本当に正しかったのだろうか。判断する局面の大小にかかわらず、会社のプロジェクトを一度でも任されたことがある人ならば、こんな堂々巡りな考えに取り憑かれた経験があるのではないだろうか。
あるいはそもそも決断ができない、いつまでもデータをこねくり回してしまうなどなど。大局を見据え、いつでもブレない態度で瞬時に的確な判断を下す……そんなふうにありたいはずなのに、現実に直面する自分は迷いだらけ、常に悩みのタネは尽きない。あぁ、自分はなんてダメなヤツなのだろう。
「でも、最新の心理学では、即断即決型よりも優柔不断型の性格が、評価を得つつあります」
悩めるビジネスマンにこんな福音の言葉をくれたのは、心理学者の植木理恵さん。テレビでもおなじみの気鋭の臨床心理の専門家である。
「実際、名リーダーといわれる方々には、いわゆる“優柔不断”な方が意外に多いのです」
この生き馬の目を抜くビジネス界で優柔不断でよしとはその心やいかに。
悩みのタイプを分けるのに、2つの軸で考えてみます。
1つ目が、遺伝的な性格とされる「楽観主義(楽天的)」か「悲観主義(冷静)」かによる分け方。もう1つが、社会的に身につくとされる「主体的」か「受動的」かという分類です。
最新の脳科学で、楽観性・悲観性というのは“セロトニン運搬遺伝子”が長いか短いかで説明されると判明しました。だから、もともと悲観的な人に楽観的になれと言ってもそもそも無理ということになります。それは、生まれついての“キャラ”なのです。
もうひとつは、生まれてからの経験で身につく後天的な資質です。心理学者のド・シャームが提唱して、最近注目を浴びている考え方です。英語で「locus of control」と呼ばれるもので、訳すと「コントロールの所在」です。簡単に言うと、物事に主体的に動くか、それとも受動的に動くか。ド・シャームは、主体的な人間をチェスの指し手(オリジン)タイプ、受動的な人間をチェスの駒(ポーン)タイプと名付けました。